人物を描くのはむずかしい。
まず、モデルになってくれる人を見つけるのがむずかしい。
運よく見つかっても、満足してもらうのがむずかしい。
満足してもらえるか心配するのは人物を描いたときだけですよ。
風景画家も静物画家もそんな心配は無用です。
バラは文句を言わないし、富士山も文句を言わない。
葛飾北斎の名作『凱風快晴』の富士山は文句を言わない。
不満があるかも知れないけど黙ってる。
言いたいかもしれない。
「あのねえ・・・これ、わたしですか?」
人間は言います。
えらい人は堂々と文句を言う。
有名な画家の画集を見てると、そんな話が出てます。
注文を受けて描いたが受け取りを拒否された。
描きなおすよう要求された。
注文を受けたわけじゃなく、描きたくて描いたんだけど、それ以後モデルと気まずい関係になった。
楽しい話です。
今読んでる、17世紀オランダ美術の本にも出てきました。
文句を言われたのはレンブラントです。
文句を言ったのは、当時のアムステルダムの有力者で、のちにアムステルダム市長になるA氏です。
A氏といっても、とくに名を秘すわけじゃなく、どう発音するかわからないのでA氏にしときます。
絵は、ふつうに立派な絵だと思います。
なんたって、レンブラントですから。
ふつうに立派に描けてると思うのに、A氏は気に入らなかった。
もめたようです。
描きなおせと言ったのか、値切ったのか、とにかくもめた。
それ以後レンブラントは、アムステルダム市のえらいさんの肖像は描かなかったそうです。
そういう話を読んで、気にならないと言えばうそになる。
カネをもらってるわけじゃないから気楽なもんだといえばいえるんですが、やっぱりね。
と言って、喜んでもらえるようにがんばろう!と気もないです。
気はないけど、シワを描くのをやめたり、まあ、知らず知らずのうちにがんばってるのかな。
↓このSさんの絵、もう一息ですが、肌をもう少しツルンと描いた方が満足してもらえるかな。
いや、こんなもんかな。悩む所です。