若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

抽斗

朝日新聞に、「抽斗」という題の文章が出ていた。

「抽斗」!
なつかしい!
「抽斗」は、「ひきだし」と読む。机の引出しである。
「抽斗」とは、四十数年ぶりの再会だ。

中学の頃、テレビの「ペリー・メイスン」が好きだった。
裁判が物珍しかったし、行動派弁護士のペリー・メイスンがかっこ良かった。
秘書の、デラ・ストリートの声も好きだった。「藤野節子」という人だったように思う。
テレビの最後に、「『ペリー・メイスン・シリーズ』は、早川書房創元社から出ています」というお知らせがあった。
で、創元社から出ていた文庫本を買った。
『幸運の脚の娘』か『すねた娘』かどっちかだ。
私がはじめて買った「おとなの本」は、この「ペリー・メイスン・シリーズ」か、北杜夫さんの『どくとるマンボウ航海記』か、広島の原爆投下秘話『もはや高地なし』のどれかだ。

どれも古典的傑作でないのが、私らしいと感心する。
で、その初めて買った「ペリー・メイスン・シリーズ」に、「抽斗」という言葉が出てきたのである。
これはいったいなんだろうかと大いに疑問に思って、辞書を引いたら、「引きだし」と書いてあったのでガッカリした。あんまりガッカリしたので、強く心に残ってしまった。「抽斗」には複雑な思いがある。忘れられない言葉だ。

「抽斗」にこれだけ複雑な感情を持っている人間はあまりいないと思う。