衆議院議員は大変だ。
選挙用看板などの会社も大変だが、こっちはうれしい大変だ。
きのう、テレビでそんな会社の社長がニコニコして出ていた。
「ボーナスですっ!」
あんまりうれしそうにするもんじゃないと思った。
政治はわかりにくい。
今回の解散についても、新聞を読むと、郵政法案とこれまでの人間関係がこんがらかっているようで、非常にわかりにくい。
賛成の人は賛成で反対の人は反対ならわかりやすいのであるが、政治はそんな単純なものではないのだろう。
政治の複雑さを教えてくれたのは、ジョージ・ウォーレスだ。
私が大学生の頃のアラバマ州知事で、黒人差別で有名だった。
州知事の就任演説で、「今日も人種差別!明日も人種差別!永遠に人種差別!」と叫んだというとんでもない男として知っていた。
だいぶ後になって、アメリカ南部に関する本を読んでいたら、彼が取り上げられていた。
ジョージ・ウォーレスは、州議会議員の「革新派」として活躍した後、州知事に立候補した。
彼は様々な政策を訴えたが、相手候補は黒人差別発言を繰り返すだけで当選してしまった。
アラバマでは黒人差別主義者でないと選挙に勝てないと思い知ったウォーレスは、次回知事選では相手候補をはるかに上回る激しい人種差別演説を繰り返して当選した。
その本によれば、知事としてのウォーレスは、特別ひどい人種差別的政策をとったわけではなく、黒人に対して十分配慮はしたそうだ。
知事になって自分の政策を実行するために、わざと激しい黒人差別主義者のふりをしたということのようだ。
ふつうの人間には、こういうことはできない。
こういうことが平気でできるのが「政治家」だろう。
黒人差別意識をかきたてながら社会改革というのも矛盾している。
しかし、とにかく知事になりたいだけ、かつがれて出るだけ、というよりましかもしれない。
いずれにせよ、この本を読んで、私はアラバマ州知事になることを断念した。
ジョージ・ウォーレスこそ、私が政治家になるのをあきらめさせた男である。