朝の電車。
いつものようにドアのところで立って本を読んでいた。
いくつめかの駅でとまった時ふと目を上げると、若い女性が二人乗ってきた。
あれ?なんかヘンだ。
何がヘンなのかすぐにはわからなかった。
二人の顔がそっくりだったのである。
背格好も同じだ。
そっくりだなあと思ってじっくり観察していたら、微妙にちがうことに気づいてくる。
微妙に違うなあと思って見直すと、やはりそっくりだ。
目、まゆ毛、鼻、口、各パーツはそっくりだ。
レイアウトがやや違っているのだろう。
ふたごだろうと思うがちがうかもしれない。
ウチの娘二人は似ていない。
というより、全然違う顔だと思う。
ところが、似ているといわれる。
次女が高校の頃、友達から、駅であんたにそっくりな人を見たといわれた。
長女のことらしかった。
親から見れば全然違う顔なのに他人から見るとそっくり。
私の高校の美術部の友達T君には弟がいた。
初めて見たとき、一瞬T君と間違えた。
T君は、全然違うやないかと言った。
何年か前、高校の美術部の友人S君の仕事場を訪ねた。
S君はいなかった。
表の通りで待っていたら、向こうからS君が歩いてくるのが見えた。
近づくにつれ、なんだか若く見えるなと思った。
S君の息子だった。
「そっくり」は当てにならない。
若い女性をじろじろ見ながら、ふたごだろうか、ふたごでない姉妹だろうかと、モンモンと悩んだ。
これだけじろじろ見ているのだから気づいてくれてもよさそうなものだ。
「おじさん、さっきからえらくじろじろ見てますけど、そう、私たちはふたごです」あるいは、「ふたごだと思ってるんでしょう。じつは違うんですよ」くらいのことは言ってくれてもいいのではないか。
気のきかん娘たちだ。