高校美術部でいっしょだった去年亡くなった浦田君のことを書いて彼の歌を思い出しました。
高校3年の時、美術部のA君と3人で信貴山の山中で焼酎を飲んだ時です。
酔っぱらった浦田君が大声で歌いだした。
なんとも感傷的な歌であったことはおぼえてるんですが、歌詞もメロディも浮かばない。
必死に考えてたら歌詞の一部が浮かんだ。
「別れと言えば昔より」
ユーチューブに出てるんじゃないかと探したらありました。
島崎藤村作詞の『惜別の歌』でした。
私の記憶の中の浦田君の歌のほうがはるかにいいと思いました。
浦田君はひとことで言うとヘンな人でした。
いや、ひとことでは言えないくらいヘンな人といった方がいいかもしれない。
大学の下宿時代一番多く手紙のやり取りをした。
彼からの手紙はすぐわかった。
封筒がはちきれそうなんです。
だいたい便せん10枚以上入ってた。
きちんと折らないので封筒が丸くふくらんでた。
便せん10枚と言っても中身は知れてます。
便せん1枚に10文字ほど書いてあるんです。
乱筆の殴り書きで、わたしは彼に「乱筆大魔王」と言う称号を授与しました。
一度だけ乱筆だけどまともな大きさの字で書いてきたことがある。
彼は画家として世に出たくてコンクールに出品しまくって落選しまくって「もう心が折れそう」と言いだしたころに特選を取ってドイツ留学と言うことになった。
高校美術部の仲間で壮行会を開きました。
ドイツから来た第一便が10枚以上の便せんにまともな大きさの字で書いてあった。
質はともかく量はすごい。
心の高揚ぶりがわかりました。
「日本人会の皆様の心あたたまる歓迎会」とか「デュッセルドルフの日本料理店で舌つづみをうち」とかみっちりびっしり書いてあった。
最後の文章を見てこけそうになった。
「この手紙と今後送るドイツレポートを壮行会を開いてくれた皆さんへのお礼にしたいので、キミがワープロで打って人数分コピーして皆さんに送ってほしい」
あほか。
あほか、と書いてやったせいか、次の手紙からまた乱筆大魔王に戻ったのでほっとしました。