若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

絶交

昨日書いたU君は実に不健全な高校生であった。
酒タバコをたしなむのはいいとして睡眠薬までたしなんでいた。
不健全な彼と健全な私が親しくなったのはごく自然ななりゆきであろう。

大学生になって私が大阪を離れて下宿してからは、激しく手紙のやり取りをした。
私もよく書いたが彼も負けていなかった。
彼からの手紙は、便箋二十枚というのがざらであった。
なぜか?
字が大きい。
一枚に十字くらいしか書いてない。
書きなぐるのである。
ヘタなどというレベルではない。
「乱筆とは何か」と聞かれたら、「これです」とためらうことなくU君の字を見せる。

乱筆はいいのであるが、切手の料金不足には困った。
何度不足分を払わされたか知れない。
便箋二十枚ぎゅうぎゅうつめこんで通常料金でいいと思うのがU君の不健全なところである。

私が大阪に戻ったので切手料金不足被害は終わった。
その後、彼の個展や展覧会に出品したのを見に行っては、下手な絵だとけなし続けてきた。

数年前、ある日の朝彼から電話があった。
頼みごとだったが、私は断った。
午後、外出から帰ると娘が、「Uさんから電話があったよ」と言った。
娘が小さいころU君は時々うちに来ていた。

「なんて?」
「Uさん・・・パパと絶交って。ぷっ!」
父が友達から絶交を宣告されたというのに吹きだすとは。

「『父は留守です』って言ったら、『これからぼくが言うことをお父さんに伝えてください。キミとは絶交する。今後一切かかわりを持たない。今言ったことをそのまま伝えてください』って。アハハ」

小学生や中学生ならまだしも、五十をすぎて友達から絶交されることはまれであろう。
私の自慢の一つだ。

頼みを断るとき、気を悪くするだろうとは思ったが、まさか絶交に至るとは思わなかった。
それにしても「伝言絶交」とは。
絶交の作法に反するやり方である。
無礼者め。

私は葉書を書いた。
「私を絶交することは許さない」

彼から返事が来た。
「葉書ありがとう。これほどうれしかったことはありません」

こんなU君を複雑と見るか単純と見るか判断に迷うところである。