母は、肌がきれいだと思う。
93歳にしては、ということですが。
十数年前、介護施設に入居するまでは、そんなことを思ったことはなかった。
他の入居者たちとくらべると、きれいだと思う。
「イヤ、ウチのおふくろのほうが」とおっしゃる方があれば、張り合うつもりはありません。
私の美肌は母譲りと言える。
この三十年ほど、寝る前にオロナイン軟膏を塗っていることもあると思うが、基本的には、母譲りの美肌といえるだろう。
今日も、つくづくと見てきたが、しわがないです。
しみもない。
プルプルの赤ちゃん肌とはいかないが、りっぱなもんである。
年に一、二回、体調を崩すと、肌の艶が悪くなる。
90過ぎで、年一、二回なら、これもりっぱなもんでしょう。
寝たきりで、ほとんど反応はないので、健康とはいえないが、それなりに安定している。
今日は、目もきれいだと思った。
母親の肌がきれいだとか、目がきれいだなどいうと、ちょっとオカシイ男と思われるかもしれないが、事実だからしかたがない。
どこを見るともなく視線を動かしていた。
空ろな目だと思うこともあるが、今日はちがった。
つぶらな澄んだ瞳であると思いました。
私も、母譲りの、つぶらな澄んだ瞳といいたいところだが、そこまで言う気はない。
別に、逆三角の濁った瞳というわけではなく、ふつうである。
と思います。