若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

夢路いとしさん亡くなる

朝刊の一面に出たのはすごい。

良い漫才だったと思います。
私が覚えているのは
「ウチの細がネ」
「え?キミとこサイなんかおったか?」
「君もモノを知らん男やな。細というのはやね、嫁さんのこと」
「キミとこの嫁さん、あれ、サイか?カバとちがうんか」

昨日、母が入居してる施設に行った。
「慰問」の人たちがたまに来る。
以前、高校生たちが「漫才」をしに来たことがある。
痴呆性老人たちの前で漫才をやろうというのが漫才的でよろしい。

チェロ独奏というのもあった。
私と同じくらいの年配の男性であった。
ヘタを通り越していた。
きのうチェロを始めたところではないか。
この人は善意で来ているのか、あるいは、家で鳴らすと奥さんに怒られるのでここに来たのか、理解に苦しむものであった。

昨日は、かつての私の話し相手、94歳の女性Mさんが、久しぶりに調子が良かった。最近は、車椅子にただ座っているだけで無反応であった。

私の顔を見ると、車椅子でにっこり笑って
「にいちゃん、ようもうけてるか」
「Mさんの半分くらい」
「あはは、ウチはからっけつ!」

「中将姫」の話も出た。
Mさんの生家の近くに、中将姫ゆかりの寺があって、子供のころの縁日がいかににぎやかだったかをよく話しておられた。
「中将姫・・・中将姫・・・」と言っていたかと思うと、「なつかしい話や!」と泣き出された。

新しい入居者のYさん。
80歳くらいの女性である。なんとも情けない今にも泣き出しそうな表情である。
職員さんに絶えず空腹を訴えている。ここの生活に慣れれば、落ち着かれると思うが。

私が母の車椅子と向かい合って座っていると、Yさんがよたよたと歩いてきて、私の横にぴったりと密着して座った。
自分の手を私の腕にぎゅっとからませて、もう一方の手で私の肩を引き寄せた。
泣きそうな顔を私に近づけて、私の目をじっと見つめた。
積極的なかたである。

別に自慢するわけではないが、私はこの施設で数多くの女性たちから好意を示されてきた。
私は、80歳以上限定のフェロモンを発しているようである。
しかし、こんな積極的かつ大胆なかたははじめてである。

何か言いたいのだが、言葉が出ないという感じであった。
Yさんは泣き出しそうな顔で私を見つめ、私の肩をゆすりながら
「ごはん!ごはん!」と言った。