この前の人物画教室で、先輩女性から、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」を模写しなさいといわれた。
笑って聞き流すのが、常識的なおとなの態度というものだろう。
おとなになりきれていない私が、マに受けてしまったのはしかたがない。
さっそく模写することにした。
先輩女性がくれたパンフレットには、「受胎告知」の一部だけが大きく印刷されている。
ひとつは、もちろん聖母マリア。
もうひとつは、大天使ガブリエル。
と思います。
先輩女性が、「三号キャンバスに描いた」と言ったとき、えらく小さいキャンバスに描いたのだなと思ったが、調べてみると、聖母マリアの顔が、三号キャンバスにちょうど原寸大で納まるようだ。
何にも考えてないように見えて、ちゃんと計算してはる。
お見それしました。
大天使には悪いが、描くとしたらやはり聖母マリアでしょう。
意外に思われるかもしれないが、高校大学と美術部にいながら、実は私、聖母マリアを描くのは初めてなんです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの模写も初めてだ。
お恥ずかしい次第である。
さて、模写の心得は、マネの「ベルト・モリゾの肖像」を描くとき、S君から伝授されている。
「ベルト・モリゾを見つめるマネの気持ちになって描け」
聖母マリアを見つめるダ・ヴィンチの気持ちになって描かねばならない。
崇拝、尊敬、愛と献身、全身全霊をあげてすべてを投げ出しわが身をゆだねる心だろう。
これは問題ない。
ウチの奥さんに対するのと同じでいい。
なれてます。
聖母マリアを模写するのは、意外に簡単かもしれない。
気分も軽く描き始める。