整骨と乗馬はどちらも腰にいいという話ではありません。
整骨院に通いだして三年か四年です。
大阪に十数か所とかいう大きな整骨院で、ウチの会社の隣の鉄工所の社長に紹介してもらった。
当時、私の腰はかなりいたんでたんです。
鉄工所の社長は毎日重い鉄パイプを扱うので腰をいためる。
整体、整骨、カイロプラクティック等々、あちこち巡り歩いた結果、ここだっ!というんです。
それなら間違いないと思うが、彼は、ヘラクレスのごとき体型である。
直径30センチの鉄パイプなど手で捻じ曲げてくれようという面構えである。
その彼が「効く!」という。
だいじょうぶかな。
私はヘラクレスじゃない。
彼に「効く!」のだったら私なんかこわれてしまうんじゃなかろうか。
テレビで時々見かけました。
カリスマ整体師だか整骨師が、「トリャ〜〜〜!」と裂ぱくの気合いもろとも患者の首をボキッ!肩をガキッ!腰をバキッ!というような荒業系じゃなかろうか。
そんなことされたら私なんかひとたまりもございませんよ。
で、確認しました。
「腰をバキッ!とやるんじゃなかろうね?」
「せ〜へんせ〜へん」
彼は笑って答えました。
安心して行きました。
院長が出てきて、「そこへ座ってください」と言う間もあらばこそ、ボキッ!ガキッ!バキッ!
ひえ〜〜〜!
だまされた!と思いましたが、効果があるんで通ってます。
この院長、一目見た瞬間、「オヌシ、できるな!」という風貌なんです。
40歳くらいでしょうか、小柄で鋭い目つき、精悍というのか、武道家の雰囲気です。
それもそのはず、後で知ったんですが、元大阪府警のSAT(特殊急襲部隊)隊員、柔道、剣道、射撃の腕は相当なものだという話でした。
熟練練達の技と気合で、あっという間に終わるんです。
その院長は一年ほどで経営陣に加わったとかで、新しい院長になった。
まあ、ふつうの人である。
「そこへ座ってください。あ、もうちょっと足を前に。いや、もう少し。ハイけっこうです。肩を丸めて・・・もう少し丸めて。肩の力を抜きましょう。そのまま後ろに倒れて。もっと倒れて。いや、肩の力は抜いてくださいよ。もう少し体を左に。そのまま力を抜いて。力を抜いてくださいよ。え〜、頭を前に・・・若草さん、だいぶ緊張してますね」
しますよ!
この後、バキッ!とくるんだと思うと力も入ろうというもんです。
今の院長も似たような感じです。
やることは同じなんですが、練達度と気合がちがう。
難しいもんですね。
馬の扱いと似てます。
馬具をつけるのに手間取ると、馬が嫌がってますますつけにくくなる。
先生がやると、パッパッパ!で終わる。
私だと、もたもたぐずぐずのらくらだらだらぐるぐる・・・。
馬は、「手際の悪い男だなあ」と怒ってると思います。
整骨も馬装も手際が大事という話でした。