柳沼重剛編『ギリシア・ローマ名言集』を買いました。
たいして面白くもないだろうと思いながら買ったんですが、たいして面白くなかった。
「名言」ってだいたい知ってるはずですよね。
知られざる「名言」ってそれほどあるとは思えない。
だから、『名言集』というのはすでに耳タコのよ〜く知ってる名言か、初耳だけどとても名言とは思えないものの集まりであろう。
とくに「ギリシア・ローマ」となると私にはなじみがないから、いずれにせよピンとこないであろう。
そんなものをなぜ買ったのか。
英語の本を読んでると「ラテン語名言」という感じの文がちょくちょく出てきます。
最近読んだ『コモンローの誕生』という本には、「ラテン語名言」らしきものがやたら出てくる。
なんの解説もなく出てくる。
新書版みたいな薄っぺらい本ですが、なんか「キメ台詞」みたいな感じで出てくる。
はじめのうちは喜んでたんです。
わからなくて当然だから。
お、ラテン語!
パス!
ラッキー!
しかし、あまりに多い。
英語の人にとってこういうのは当たり前なんか。
いったい「ラテン語名言」にはどんなものがあるのだろうか。
で、買ったんです。
ぶっちゃけた話、ろくなもんはないと思いました。
『論語入門』でも読んでた方がマシです。
英語の人にとっては、『論語入門』はろくなもんじゃないかもしれない。
この本には名言が1番から211番まである。
その第5番。
「海だ!海だ!」
これが「名言」???
編者によれば、「数多い引用句辞典の中に、これを収録していないものはほとんどないだろう」というんですが。
クセノポンの『アナバシス』に出てくる文句です。
『アナバシス』は何年か前に読みましたが、「海だ!海だ!」なんかおぼえてない。
本棚から引っ張り出して確認してみました。
ギリシアの傭兵部隊が山中をさまよって故郷を目指す。
やっと海を目にした時に兵隊たちが、「海だ!海だ!」と叫ぶんです。
読み返しても別にどうと言うことはなかったです。
たぶん、ヨーロッパではこの場面は講談や浪花節、絵物語やアニメなんかでなんどもとりあげられてるんでしょうね。
さて、第17番!
驚きました。
この本を買ってよかった!
「ブレケケケックス、コアックス、コアックス」
ギリシアの劇作家、アリストパネスの喜劇『蛙』の中の蛙の鳴き声だそうです。
とても名言とは言えないと思いますが、驚きました。
子供のころ、NHKTVでカッパが出てくる人形劇があったんです。
カッパのあいさつが「ブレケケケックス」だったんですよ。
「こんにちは」とか「おはよう」という感じで、「ブレケケケックス」と言うんです。
久しぶりに私の脳に聞きたい。
なぜ50年以上前に聞いたカッパのあいさつなんかおぼえてるのだ。
あれは、アリストパネスの蛙からきた由緒正しきありがたいものだったんですね。
これがわかっただけでも『ギリシア・ローマ名言集』を買ってよかったです。