近鉄電車に乗って座席で本を読んでたら突然大きな声が聞こえました。
声は大きかったけど、本を読んでたのでなにを言ってるのかわからなかった。
何かと思ってたらもう一度声が聞こえて、こんどはわかった。
「西大寺駅で京都行急行に乗りたいんですが、どなたか乗せてくれませんか」
声の方を見たら、白い杖を持った高齢女性でした。
で、立ち上がって、その女性に「私がご案内します」と言いながら、前にもこんなことがあったような気がしました。
うっすらとしかおぼえてないんですが、同じ女性だったと思います。
前に立った私に彼女は、「おにいさんも京都行急行に乗るんですか」と聞いた。
「いや、私はおにいさんじゃありません」というべきかどうか迷ったけど、いわなかった。
「私は京都行急行には乗りません」
「わるいですね」
「だいじょうぶですよ。西大寺で乗りかえますから」
「おにいさんは西大寺駅のホームはわかりますか」
ここできっぱりおにいさんではないといわないとほかの乗客に白い目で見られるのじゃないかと思ったけど、いわなかった。
「西大寺のホームはよく知ってますよ」
「そうですか。この電車は5番線につくんです。京都行急行は3番線に来るんです。5番線ホームのエスカレーターをのぼって、3番線のエスカレーターで降りて連れて行ってくれますか」
う~ん、これはちょっと説明が必要だけど、わかってもらえるかな。
「いや、エスカレーターは使わなくていいんです。4番線に難波行急行が来ますから、難波行急行の車内を通り抜けて3番線に行けるんですよ。エスカレーターには乗らなくていいんです」
「え~!そんなことができるんですか。エスカレーターに乗らなくていいんですか。京都行急行はすぐ来るんですけど、まにあいますかね~」
かなり不安そうだったので、安心してもらおうとバ~ンと大声を出しました。
「だいじょうぶです!いつもこの時間に乗ってますからよく知ってるんです!難波行急行が来て、その車内を通り抜けて、3番線で待ってたら京都行急行が来るんです。時間は十分あります。だいじょうぶです!」
「そうですか。エスカレーターに乗らなくていいなら助かりますけど、まにあいますかね」
「だいじょうぶです!十分まにあいます。だいじょうぶです!」
これほど「だいじょうぶです!」を連発したのは生まれて初めてですが、目の不自由な高齢女性に安心してもらうためですのでご理解のほどお願いします。
で、西大寺駅で降りて、やってきた難波行急行車内を通り抜けて3番線ホームに案内して、これで良しと思ったら、彼女がまた言うんです。
「このホームにコンビニがありますね」
「はい、左手にありますよ」
「左手ですか。あの~、コンビニが右手に見えるところに連れて行ってほしいんですけど」
なるほど。
京都行急行を待ってる間、「おにいさん、電車、遅れるんじゃないですか」と何度も気づかっていただきました。