本の題は「妾(わらわ)」となってますが、本文では「妾(しょう)」とルビがふってあります。
福田英子さんについては知りませんでしたが、キンドル無料本にあったので読んでみました。
幕末に岡山の下級武士の娘として生まれ、明治、大正に活躍した「政治活動家」「社会活動家」です。
40歳くらいに書いた「自伝」ですが、序文にこういうことが書いてある。
「罪深い人といえば私がナンバーワンでしょう。愚か者といえば私以上の愚か者はいないでしょう。今まで生きてきて、したことはすべて罪悪、考えたことはすべて誤りでした。省みれば、恥と懺悔と苦悶懊悩ばかりです。これまでの人生、失敗の連続でした。しかし、失敗をものともせず私は常に戦ってきました。これまで自由民権運動に身をささげてきましたが、これからは貧者救済のために全力を尽くします。生きている限り私は戦い続けます。この本は懺悔の記録ではなく、私の戦いの宣言です。」
本当にその通りの内容です。
仕事も家庭も失敗、不運、不幸の連続、思い通りになったことがない。
しかし、めげない。
子供のころ、評判の秀才だった。
どういうわけか16歳まで男装してた。
どういうわけか17歳で自由民権運動に燃え上がってしまった。
自由民権運動の闘士たちと共に戦う。
戦うけど、自由民権運動の闘士たちは闘争資金で遊郭に行って女郎を買うわどんちゃん騒ぎをするわ、騒ぐだけでなくカネを持ち逃げするやつも出てくるわ、ひどいもんです。
福田英子さんは怒り狂いますが、そういうどうしようもない人たちにまじって朝鮮近代化のために爆弾テロを計画して逮捕される。
刑務所では「思想犯」として所長や警吏から一目置かれて、ほかの女囚たちの指導を任される。
この刑務所時代がこの人の一番幸せな時だと思います。
家の心配も食べる心配もなく、不幸な女たちを教育してやる。
そのまま刑務所で一生を終わらせてあげたかった気がしました。
この本で一番わからないのは、彼女たちが刑期を終えて刑務所を出た時、各地で大歓迎されるんです。
無茶苦茶歓迎される。
英雄というよりアイドルという感じです。
自由民権運動、ナゾである。
この本の後の半生も失敗の連続だったみたいです。
何もしないより何かして失敗する方がましだ!と言ってあげたいけど、う~ん、どうでしょうか。