イギリスの競馬騎手アンソニー・ピーター・マッコイの自伝を読んでます。
先日読んだイギリス馬場馬術のオリンピック金メダル選手カール・ヘスターの自伝『金メダルへの道』で知った人です。
『金メダルへの道』の次が『勝利への道』ではいかにも芸がない訳し方だと言われそうですが中身がそうなんだからしかたない。
この人は2015年40歳で20年連続年間最多勝を達成して引退した伝説的騎手だそうです。
イギリスでは競馬はサッカーに次ぐ観客動員数の人気スポーツだそうで、日本で言うと野球の川上?、ちょっと古いか、え~っと長嶋?まだ古い?まあイチロークラスの人だと思います。
競馬といっても障害競走の騎手なんですが、イギリスでは障害競走の方が人気があるそうです。
この人は北アイルランド出身で、子供のころから爆弾テロ騒ぎは日常だったと言うんですから「別世界」です。
もうひとつ「別世界」と思うのは、お父さんが大工さんなんですが馬を飼うのが夢だった。で、自分の家を建てた時に馬小屋も作った。3頭分。
犬を飼いたくて犬小屋というのはわかりますが馬ですか。
馬を飼いたいので自宅の庭に馬小屋なんて理解不能です。
馬を育てて高く売るつもりなのかその辺の説明はありません。
で、アンソニー少年はやってきた馬に夢中になる。
家の馬だけでなく近所の調教師のところに入りびたりで、馬、馬、馬の毎日です。
とくに馬に関係ある地方ではないんですが、勉強もほったらかしで、義務教育である中学の最終学年はほとんど学校に行かなかった。
義務教育を受けさせないと親が罰金なのでお母さんはたいへんだった。
その問題児アンソニー少年が、のちにイギリスを代表する騎手になって、出身中学に講演に招かれた。
生徒たちに「勉強は大事だ。一生懸命勉強しなさい」と熱弁をふるった。同窓生が聞いたら笑い転げるだろうと我ながらおかしかった。
なんとか中学を終えて、騎手になるため有名な調教師に弟子入りした。
そこには騎手を目指す若者が10人ほどいた。
その調教師は無茶苦茶厳しい人で、絶えず怒鳴りまくってた。何度か逃げ出そうと思ったが思いとどまった。
なぜなら「徒弟契約」は3年で、途中で逃げ出したらほかの調教師に弟子入りすることはできなかったんです。逃げ出すことは騎手をあきらめることだった。
ある日アンソニーが落馬して足を骨折した。
親方がやってくるのを見て、やさしい言葉はかけてくれないだろうと思ったけど、激痛にうめき声をあげるアンソニーに「足の一本や二本折れたくらいでキーキー言うな」と言って去っていったのはショックだった。
しかし、「この親方についてよかった。競馬のすべてをたたきこんでくれた」と感謝してます。
この親方の下で徒弟期間を終えて、次にまた有名な親方の厩舎に入ったんですが、ここは規律がないと言っていいほどゆるかった。信じられないくらいゆるかった。
何十頭も馬がいて若者の数も多かったけど、親方は放任主義だった。
これほど規律がなくていいのかとあきれるくらいだったけど、その親方も競馬界では有名な人で実績も十分だった。
どのやり方が正しいのかほんとにわからないと書いてます。
「別世界探検」楽しいです。
イギリス競馬界の最大の注目レースは「グランド・ナショナル」という障害レースだそうで、ユーチューブで見たんですが、すごいです。
40頭ほどの馬が7キロ近くの距離を、高さ1メートル50前後の障害を何十回となく飛び越えていきます。
もちろん全力疾走というわけにいかないからず~っと集団です。
集団で障害を飛び越えるんだから危険きわまりない。ゴロンゴロン落馬します。完走2頭という年もあったそうです。
べつにイギリスの競馬について知りたいわけではなく、「別世界」について知りたいと思って読み始めました。