野上弥生子が87歳から書き出して自伝的大河小説になるはずが作者が99歳で亡くなって尻切れトンボになったのはしかたないと思います。
87歳からよく書いたもんです。
みっちり書いてる。
女学校時代から書き出して、途中から学友の結婚話になってしまって、あれ?どうなるのかなと思ってたら終ってしまった。
キリスト教系の女学校なんですが、まじめな明治日本人にとってキリスト教というのは大きな問題だったんだろうと思えるややこしさです。
明治時代が描かれてる。
知り合いの家を訪ねて行くのも徒歩です。
1時間2時間歩くのは当たり前です。
メールも電話もないから2時間歩いて行ったら留守だったというのも当たり前。
女学校は東京郊外にある。
主人公は早朝からてくてく出かける。
街道を荷車を引いた百姓たちがどんどんやってくるのとすれちがう。
百姓たちは都心に向かって何をしに行くのか。
肥汲みに行くんです。
夕方、下校する主人公は都心から戻ってくる百姓たちとすれちがう。
荷車には汲み立てほやほやの肥が満載である。
くさくてたまらない。
明治である。
ある日主人公は馬車に乗る。
馬糞が道路に飛び散らないように馬のお尻には「馬糞収集袋」がぶら下げてあって馬糞であふれそうになってる。
くさくてたまらない。
明治である。
野上弥生子晩年の傑作を読んでこんなことしか書けない自分が情けない。