処方箋を持って薬局に行きました。
先客ひとり。
けわしい顔をした50代と思える男性です。
けわしい顔というより生きるのに疲れ果てた顔といった方がいいかもしれない。
社会に対してか自分に対してか不満のたまった顔といった方がいいかもしれない。
せまい薬局なので少しだけ距離を置いてすわりました。
しばらくすると男が立ち上がって私の方に来た。
私の前で何かしてるなと思って見上げたら、ドリンク剤なんかが入った冷蔵ケースを開けて缶入りのポカリスエットを取り出した。
そしてカウンターの向こうの薬剤師に向かって缶を差し上げると、「ポカリ!」と言った。
薬剤師はうなずいた。
常連さんみたい。
男は席に戻ってポカリスエットを飲んだ。
一気飲みです。
一気飲みはいいんだけど、ポカリスエットを取り出したケースの扉は開けっぱなしです。
私の目の前なので立ち上がって閉めた。
男はじろっと私を見た。
一瞬緊張しました。
一気飲みした男は立ち上がって缶をくずかごに放り込んだ。
放り込んでしばらくすると男はまた立ち上がってくずかごに近寄った。
くずかごをごそごそし始めたと思ったらさっき捨てたポカリスエットの缶を取り出した。
一瞬緊張しました。
どうするのかと思ってたら男は缶をぽいと下に投げた。
くずかごの横に小さな箱が三つ置いてある。
「びん」「缶」「ペットボトル」と書いてある。
その「缶」と書いた箱にポカリスエットの缶を入れたんです。
案外細かいところもあるんだなあと感心しました。
感心してたら男は「ゲッフ~~~~!」とものすごく盛大なげっぷをした。
盛大なげっぷにおかしくなったのか男は「うふっ」と小さな声で笑った。
緊張はしなかったけど気持ち悪かった。