若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

社交界

社交界」にはエンがないです。

「どんな界やねん?」という感じです。

イギリスの女性社会学者ベアトリス・ウエッブの『私の修業時代』を読んでたら社交界が出てきました。

1858年生まれの彼女は億万長者の娘で15歳で社交界にデビューする。

当時の億万長者の娘は社交界にデビューする以外の生き方はなかった。

女性が大学に行ったり職業を持ったりするのは20世紀に入ってからだと書いてます。

 

このころの億万長者の子供には家庭教師がつく。

家庭教師と言っても学生アルバイトじゃないですよ。

フランス人やドイツ人が住み込んでたんです。

それからお嬢さん学校の「特待生」として寄宿舎に入る。

「特待生」と聞いて「授業料がタダ!」と思うのは貧乏人の浅ましさです。

「特別待遇生」のことです。

寄宿舎の部屋が豪華なんです。

 

それから社交界デビュー。

社交界にデビューしたベアトリスが気づいたのは、自分は男のことしか考えてないということと虚栄心とうぬぼれのかたまりであるということであった。

頭の中はどうすれば男の目を引き付けられるのかということでいっぱいだし、男から甘い言葉をかけられたらのぼせあがってしまう。

男、男、男!

こんなことではダメだ!と反省するけどどうしようもない。

教会に行って、「心を入れ替えます。男のことは考えません!」と神に誓っても無駄であった。

自分ではどうしようもないので「神様、なんとかしてください!」と祈っても無駄であった。

悩んだあげくたどり着いた結論は、男のいない国に行くしかないということであった。

 

結論は出たのであるが社交界は楽しい。

ダンス、お食事、乗馬、素人芝居。

月曜から土曜まで社交界で楽しんで自己嫌悪に陥って日曜に教会で懺悔するという繰り返しであった。

しまいに教会に行くのがイヤになる。

 

のちに社会学者としてイギリスの貧困問題にとりくみ、労働組合生活協同組合に関わるようになって「社交界」を批判する立場になる。

ロンドン社交界の中心メンバーは四つのグループだと書いてます。

まず王室。

イギリスの伝統を代表する。

次に内閣。

イギリスの政治勢力を代表する。

次に億万長者。

イギリスの金力を代表する。

最後に「ジョッキークラブ」というんですが、これはわかりにくい。

「ジョッキークラブ」というのは競馬好きの貴族の集まりで1750年創立の由緒ある団体のようですが彼女も「この方面のことはよく知りません」と書いてます。

 

「ミエを張るのは社交界の人間の職業病である」というんですが、「職業病」って結構古いことばなんですね。