NHKTVの『ブラタモリ』で大室山を取り上げるというので楽しみにしてました。
何年か前大学美術部のOB会で伊東に行った時大室山の美しさに感激しました。
日本三景の天橋立や松島はなんとも思わなかったけど大室山はよくこんなものができたなと思いました。
『ブラタモリ』で火山学者がなぜこんな美しいものができたか説明してくれましたがもう忘れました。
あの時の感激をもう一度、と思ったんですがテレビではムリでした。
風景に感激したのは他には一度だけで九州で馬に乗った時の草原です。
私は草好きなのかもしれない。
イギリスのジャーナリスト、バーナード・レビンの本を読んでますが、自分は町の子で田舎はキライと言ってます。
美しい田園よりごみごみした都会が好き。
海辺でのんびりなんてしたくもない。
そんな人でも感激することがある。
彼の大学時代、旅行と言えばヒッチハイクだった。
ある時ドイツのアウトバーン(高速道路)で車を止めてのせてもらった。
アウトバーンでのヒッチハイクは禁止されてたけど、フランス人男性とイギリス人女性の夫婦が乗せてくれた。
楽しくおしゃべりしながら走ってたらフランス人男性が「学生さん、急いでないなら高速を降りて景色を見ながら走りたいんだけど」と言った。
急ぐ旅じゃないのでOK。
高速道路を降りてライン川沿いの道を走りだしたとたん、さっきまでにぎやかにおしゃべりしてた3人が黙り込んでしまった。
美しい!
圧倒的美しさである。
次々に現れる畑、森、教会、村、城。
それまでバーナード・レビンにとってどこに行っても「風景」なんかないも同然だったのに目に入るすべてに心を奪われた。
ぼうぜんとしていたら有名なローレライの像が見えてきた。
写真で知ってるおなじみの像だけれど夕日を浴びて実に美しく、思わずハイネの詩を口ずさんでしまった。
彼は中学高校時代、詩の暗唱が得意中の得意だったんです。
暗唱の宿題が出ると友人たちは文句を言ってたけど彼は大喜びだった。
イギリス、フランス、ドイツの詩をかたっぱしからおぼえた。
で、ローレライの像を見てハイネの詩がすっと出てきた。
「♪なじかは知らねど心わびて」というやつです。
フランス人男性があまりにびっくりしたので満足であった。
その後スペインを旅した時同じくらい感激した。
やはり高速道路を走っててトラックばっかりなので一般道に降りたら見渡す限りひまわりの海だった。
走っても走ってもひまわり。
「ワーズワースはひと目で千本の水仙を歌ったけど、ひと目で千万本のひまわりだった」
バーナード少年の寄宿制の中学高校はイギリスでも有数の風光明媚な所にあったんですがなんにもおぼえてないそうです。
自然と触れ合ったと言っても、落ち葉集めとトチの実拾いをやらされたくらいで、戦時中の「食料増産報国学徒動員」みたいなものだった。
若い時に風景に感動することはあまりないでしょうな。