若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

不良

沖縄で、中学生が友達に暴行を加えて殺している。

よく言われるが、昔の不良はそこまでやらなかったのではないか。
私の中学校にも、全校的に有名な不良少年、不良少女はいた。

中学二年の同級生S君は、有名な不良であった。
高校のとき、学校の近くのパチンコ屋でS君に会った。
ますます恐そうになっていた。
「どうしてるの?」と聞くと、彼は上着の腕を捲り上げてイレズミを見せた。

中学二年の時、A君と親しくなった。
非常に背が高かった。私が二番目だったのでいっしょに並ぶことが多くて仲良くなったのである。はにかみやのおとなしい人だった。
A君の家に行ったこともあるから、かなり親しくしていたと思う。

あるとき、同じ組のB君が私に言った。
「おまえ、Aがどれだけ恐いか知ってるんか?Aが怒ったら、Sなんかいっぱつやぞ。SもAには近づかんやろ」

B君はA君と小学校がいっしょなのでよく知っていると言うのだ。
私は驚いたが、そう言われれば、S君はA君に一目置いているように思えた。
しかし、A君が恐い男だとは信じられなかった。

体育祭の予行演習の日だった。
グラウンドで整列している時、A君は新しい体操着を皆に自慢した。
「スマートええやろ」と言った。
ちょっとおかしな言い方だとは思ったが、黙っていた。
まじめな私は前を向いて立っていたが、みんなはガヤガヤしていた。

「『スマートええやろ』やて!あほちゃうか。『スマートええやろ』やて!ギャハハハ」
隣の組のKの声だった。
Kも全校的に有名な不良だった。
Kは、A君と同じくらい背が高くて、A君よりごつかった。

A君の凄まじい怒鳴り声が響いた。
「スマートええやろ言うて、どこがおかしいねん!」
驚いて私は後ろを振り返った。
A君の背中が見えた。右腕を振り上げて、Kにフックを浴びせる瞬間だった。

バチン!という音とともに、Kの大きな身体が吹っ飛んだ。
しりもちをついたKは、青ざめた顔で恐怖に目を見開いてA君を見上げていた。
凍りつくような一瞬であった。

A君が、サッと振り向いた。
うわっ!私と目が合ってしまった!

私の目をじっと見すえてA君が言った。
「なあ!『スマートええやろ』て、おかしいことないやろ!」

私は、生唾を飲み込みながらうなずいた。

文法の話をする雰囲気でなかったことをご理解いただきたい。