きのうは、会社の近くの神社のお祭りだった。
子供の頃は、この神社のお祭りが楽しみだった。
「のぞきからくり」が見たくてたまらなかったが、親に連れられていた頃は「見たい」と言えなかった。
たぶん、「怪しげな雰囲気」から、親が許してくれないと思って、自己規制していたのだと思う。
友達と行くようになって、「不如帰」を見た。
「のぞきからくり」の演目は、この「不如帰」と「地獄極楽」だけだったと思う。
特に面白いとは思わなかった。
おじいさんとおばあさんが掛け合いで語る、調子のよい文句が楽しかった。
「・・・ボートに移りしその時に、浪子は白のハンカチを、打ち振りながらネエあなた、早く帰ってちょうだいと・・・」
お祭りは、とにかく怪しげであった。
怪しげなものをよく買った。
おじさんが、面白おかしくしゃべって、怪しげなものを売りつけるのである。
小さなどくろの面を買ったことがある。
蛍光塗料で目や口が描いてある。
おじさんが帽子に入れて、見せてくれる。
目と口が妖しく光る。
「恐怖のミイラ現る!お母ちゃんが腰抜かすぞ!」
喜んで買って帰って、母に見せたが、母は腰を抜かさなかった。
高さ1センチくらいのプラスチックの下に、鉄がついたものを売っていた。
これをたくさん下敷きに乗せて、下から磁石で動かす。
「東山三十六峰静かに眠る丑三つ時、京の都を歩く影三つ。鞍馬天狗、月形半平太、桂小五郎であった」
小さなプラスチックが、俳優のように思えてくる。
喜んで買って帰ると、ただのプラスチックのクズで、面白くもなんともない。
透明のプラスチックの細長い筒に水が入っていて、中に、赤や青のプラスチックの玉が浮いている。この筒を逆さまにすると、赤や青の玉が上に浮かび上がっていく。
おじさんは、この浮かび上がっていく様子を、「本日の最終レース、天皇賞!本命は赤!赤早い!赤早い!青が追う!」
などとしゃべる。
これまた面白そうなので喜んで買って帰ると、これまた面白くもなんともないただの筒なのである。
小学生の頃は、こういう怪しげなものをたくさん買った。
そのおかげで、今はコマーシャルにつられて買うということはない。
おじさんたち、ありがとう。