若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

目を開ける

会社の近くに神社がある。
それほど大きな神社ではない。

たまに、赤ちゃんを抱いた、初宮参りの家族の姿を見かけることがある。
若い両親と、お父さんかお母さんのお母さんに抱かれた赤ちゃん。
「おばあさん」という感じの人はいませんな。

おでこのところに、「大」とか「小」か書くのはどういう意味があるのか。

その神社の近くに写真屋がある。
初宮参りや七五三の家族が記念撮影しているのを見かける。

二十年ほど前、現像を頼んであった写真を取りに行ったら、初参りの赤ちゃんの記念写真の撮影中で、しばらく待たされたことがある。

赤ちゃんは、お地蔵さんのような顔をして、すやすやと眠っていた。

写真屋の主人は、がらがらを振って
「はーい!こっち見てちょうだーい!」
などと叫んでいた。

お母さんと「おばあちゃん」は、
「なおちゃーん、なおちゃーん、お目目あいてー」
としきりに呼びかけていた。

しばらく全員で赤ちゃんの目を覚まそうとがんばっていたが、赤ちゃんは知らん顔であった。

「しかたないですなー」
「じゃ、おねがいします」
ということで、記念写真の撮影は終わった。

「おばあちゃん」は
「だめでちゅねー、なおちゃん。お目目つぶったままで」
と非常に心残りのようであった。

それを聞いて写真屋の主人が言った。
「目、あけときましょか?」

私も驚いたが、三人はもっと驚いたようで、口をそろえていっせいに
「いいです!いいです!そのままでいいです!」
と叫んだ。

写真屋の主人の言い方は、きわめて軽く、「目を開ける」なんて、日常茶飯事、朝飯前のお茶の子さいさい、世界の誰もがやっている、という感じなのであった。

私は、写真には全くの素人であるが、「目を開ける」のがそんなに簡単なこととは思えなかった。
神をも恐れぬ所業であると思った。
しかし、写真を職業とする専門家が、これほど軽く言うところを見ると、「目を開ける」のは、やはり簡単なことなのであろうか。
誰か知っている人、教えてください。

私としては、その御家族に、参考のため「目を開けた」写真も頼んでおきなさいと言いたかった。

見たいのだ!