若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

遺伝

昨日、息子が髪の毛を黒く染めてきた。
今年、大学へ入って茶色く染めていたのである。
黒い方がいいと思った。

十年程前、高校時代の友人のS君と、彼の息子といっしょに飲んだことがある。
彼の息子は、アルバイトをしながら、「前衛的音楽」に打ち込んでいるらしい。

飲みながらS君が、息子に
「やっぱり黒がええよ」
と言って、私に
「なあ」
と同意を求めるように言った。

何のことかわからなかった。
S君が説明してくれた。
「いや、こいつな、こないだまで髪の毛、緑色に染めとったんや。その前がピンク。きのう黒に染めよったんやけど、やっぱり黒がええよな」

う〜む、緑とピンクを見ていないので、どれがいいとも答えかねたのであった。

数年前、S君の仕事場の近くまで行ったので、ふらりと立ち寄ったことがある。
仕事場は開いていたが、S君はいなかった。
近くに出かけているのだろうと思って、通りで待つことにした。

すぐに、向こうの方からS君が歩いてくるのが見えた。
だんだん近づいてくると、顔はS君に似ているがS君ではなかった。
S君のもう一人の息子なのであった。

歩く姿がS君そのままなのであった。
若い頃のS君と出会ったような不思議な感じがした。

行きつけの散髪屋でのこと。

私の隣の椅子で、六十年輩の男性が、主人に頭を洗ってもらっていた。
洗い終わってタオルを渡しながら、主人が感に堪えたような声で言った。

「親子て不思議なもんやなー!」
「なにが?」
「イヤ、あんた、今こうやって、椅子のこっち側に出てきて、こう向いて、そう手を出すやろ。あんたとこの息子が、同じかっこするもんな〜!
他のお客さんは、たいがいその場で受け取るんや。
あんたと息子とそっくり同じかっこやで!
不思議やな〜!教えたわけでもなし、見てるわけでもないのにな〜!」

顔が似るのと同じように、動きも似る。
当たり前のようだけれど、顔が似ているより不思議な気がする。