若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

若草山山開き記念鹿せんべい飛ばし大会報告:3

さて、競技も終わり、鹿せんべい飛ばし大会アトラクション、皆様お待ちかね、野外特設ステージでのライブショウだ。

この数年、私と、神戸の「ファイブローズ」というグループが出る。
「アトラクション」は、本来の意味では「客を引き寄せるモノ」ということだ。
しかし、若草山観光振興会の辞書では、「アトラクション」は「場つなぎ」と言う意味だ。

私たちは、出たくて出ている。
だから観光振興会は一銭も払わなくて良い。
お互い好都合で、迷惑するのは客だけだ。

「ファイブローズ」というグループは、私は勝手に「ロマン歌謡グループ」と名づけている。
「ファイブ」と言うのに、去年まで四人で、今年は三人だ。
私と同じ年配の人たちである。

雨は降り続いている。
と、ふもとの一角で人が集まっているのが見えた。
護摩壇を築いて火をつけている。
修験者が現れて護摩壇に向かって祈り始めた。
護摩壇の周りでは、振興会のはっぴを着た人たちが踊りだした。

振興会の人に、何をしているのか聞いた。
「雨乞いのご祈祷です」

なぬ!?
雨にたたられて狂ったのか!

私は大声で、「やめろ!」と怒鳴った。
しかし修験者は若草山山頂に向かって、「のーまくさんだーまかろーしゃー!キエーッ!」と裂帛の気合を込めて絶叫した。

その瞬間、若草山を揺るがせて雷鳴がとどろき、パシッ!という鋭い音とともに稲妻が走り、凄まじい勢いで雨が降ってきた。

そして、雨が激しくなるのを待っていたかのように、野外特設ステージから女性アナウンサーのさわやかな声が聞こえてきた。

「皆様、大変長らくお待たせいたしました。ただいまから、『ファイブローズ』の皆様による歌謡ショウをお楽しみいただきましょう!」

無人若草山に向かって「皆様」とは・・・。
これがプロなのか。

次の瞬間、私は目を疑った!
なんと、テントやゲートで雨宿りをしていた人たちの中から、傘をさして野外特設ステージに向かう人がいるではないか!

こ、これは一体・・・・。
十人ほどの人たちが、傘をさしてステージ前に立った。
タダなら見なければ損だとでもいうのか!
これが人間の業なのか!

私は感動した。
感動しつつも焦った。
私の出番は次だ。
「ファイブローズ」の皆さんの歌は、私の出番まで客をつなぎとめられるであろうか。