合宿に最初に参加したのはギターを習い始めてすぐであった。
十年以上前だ。
最初の時は、同じクラスの中二トリオと、近鉄特急の座席で、オセロゲームなど楽しみながら行ったのであった。
この時、私はほとんどギターを弾けなかった。
「ボーイ」とか言うグループの「ビーブルー」という曲を弾いた。
結構速い曲なのだが、そのままではぜんぜん弾けないので、尊師が、「これ以上遅くすると歌いにくくなる」という限界まで遅くして弾いたのであった。
若い男の子が歌った、というよりうなったので、ロックというより浪花節に近かったのではないか。
この曲の歌詞に、「傷ついた翼」だったか「堕ちた天使」だったか、そんな言葉があって、なかなかおしゃれな人たちだと思ったが、その後このテの曲を聞くと、「傷ついた翼」や「堕ちた天使が」ゴロゴロ出てくるのであきれたのであった。
この合宿に、28歳のお医者さんが来ていて、私を見て、「あーよかった。ボクが一番年上かと思ってたんです」と言った。
なにが、「あーよかった」のか訳が分からんと思った。
ここで、若者たちのエレキギターを持たせてもらった。
私は、自分が買ったエレキギターの重さに驚いていたので、比べてみたかったのだ。
持ってみては、「ああ軽いね」とか言って返す私を見て、28歳のお医者さんがくすくす笑った。
「なに?」
「いや、あの子達、ずっこけてますよ」
「どうして?」
「ふつう、ギター貸して、と言ったら、弾かせてっていうことですよ。まして、鹿之助さんみたいな年の人が、貸してっていったら、どんなに弾きまくるか、あの子達びびってたはずですよ」
その後私はどんなに興味のあるギターでも、持たせてとは言わないことにしている。
合宿の楽しみは、大きなアンプで大音量を出せることだ。
あるとき、私は一人で家ではとても出せない爆音を楽しんでいた。
そこへ、高校生が二人入ってきた。
しばらく私のギターを聞いていたが、「いつもこんな小さい音で弾いてるんですか?」と言った。
「?」
「ボクら、これです」
これはすさまじかった。
彼らと午前中いっしょにいたのだが、私は昼ごはんを食べることができなかった。
丑之助君やセンベー君と、「サンダー」というバンドを聞きに行った時もライブ終了後何時間か耳と頭がおかしかった。
爆音は肉体に応えます。