ベンチャーズの「テルスター」という曲を練習する。
「テルスター」は、1962年にアメリカが打ち上げた通信衛星の名前である。
本名なのかニックネームなのかは知らない。
昔から非常に好きな曲である。
はるか宇宙の彼方を飛んでいる人工衛星の感じがよく出ている。
「通信衛星」というのがなんだか楽しい。
練習をはじめてびっくりした。
実に簡単で単純な曲である。
エレキギターを習い始めて十数年、これほど簡単な曲はなかった。
指をそれほど動かさず、同じような場所を押さえていればいい。
速く弾く部分もない。
特別な技術もいらない。
私のために作ってくれたような曲だ。
ありがとう。
ありがたすぎてふと疑問が浮かぶ。
こんな簡単単純な曲が好きでいいのか。
「テルスター」が好きです、というのは恥をさらしているみたいなものかもしれない。
「あんな単純な曲が好きなのか。フフン」
昔々、テレビの音楽番組で、黛敏郎さんがベンチャーズの曲を「解剖」したことがあった。
「・・・というような、非常〜〜に単純な曲です」
単純だから程度が低いとは言わなかったが、そう言いたいのではないかと邪推した。
そのとき、曲を聞くだけでなく、解剖できることを知った。
解剖できる人の前では、「テルスターが好き」と言わないほうがいいかもしれない。
エレキギターを習い始めたころ、「ドクター・シーゲルの、良い子のエレキ教室」というビデオを買った。
先生のドクター・シーゲルが、「諸人こぞりて」という曲の、「もーろびとーこぞーりーてー」という部分は、「ドーシラソーファミーレードー」だと言って弾いてみせたときは驚いた。
ドシラソファミレド???
なんか、だまされたような感じだ。
それはないでしょう、と言いたい。
そんなアホな、と言いたい。
なめとるんか、と言いたい。
西洋音楽史上最大の詐欺、という気がする。