若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

成人式

ディズニーランドで成人式というのは、面白いアイデアというかふざけてるというかいじらしいというかなめてるというか涙ぐましいというか、まあよくわからん話である。

私は、成人の日は叔父の家で祝ってもらった。
叔父が、百貨店の包装用のピンクのヒモを私の首にかけてくれた。
叔母はネクタイをくれた。
このネクタイはつい最近まで使っていた。

成人式に出たら一人前になったと感じるだろうか。
感じそうにない。

私はいつの間に「一人前」気取りになったのだろうか。
よくわからない。

まだ一人前じゃないのだな、と思ったのは中学の時だ。
「保健」の教科書に、「思春期になると自我に目覚める」と書いてあった。
これは恐ろしかった。
自分の心に、何かボコッと出てくるのだと思った。

いつ出てくるのか。
「悲しき16歳」という歌がはやった。
16歳になると出てくるのかなと心配であった。

社会党の浅沼委員長刺殺犯やなにかで、「恐るべき17歳」という言葉をよく聞いた。
17歳になると出てくるのか。

出てこなかった。
17になっても18になっても出てこないので、また心配になった。
私は遅れてるのではないか。

19のときだったか、同じ高校のA君がフランスに行くことになった。
美術部の後輩のT君の友達で、とくに親しい男ではなかった。
現代詩を書いていたのか読んでいただけか知らないが、とにかく「詩人」ということであった。
ふっくらした大柄な人だった。

一人船でフランスに行く!
「一人前」ではないか。
パリで一人で暮らすというのがとんでもなく「一人前」に思えた。
さすが詩人!

T君と二人で、A君の話をしていたら、T君が言った。

「あいつ、若草さんのこと、禅坊主みたいな人やな〜って、感心してました」

なぬ!
禅坊主!
この、悟りを開いた計り知れぬ心の深さを感じていたのか。
さすが詩人!

「冬でもペラペラの学生服だけでえらいって」

さすが詩・・・いや、あ、あのねー。
私はやせてるんです。
ペラペラの学生服の下に、しっかりセーター着てるんです。
着込んでるのに薄着に見えるんですよ。

あれから40年、A君は詩人ではなく私は禅坊主ではないが二人とも一人前の顔をしている。
めでたしめでたし。