来年の初詣客の予想が発表された。
近畿地方では伏見稲荷が二百六十万人で一位、住吉大社が二位の予想だ。
正三位のお稲荷さんが一位とはこれいかに。
犬猫病院で一位になっても獣医というが如し。
古いな。
この予想は、各府県の警察が、独自に行った調査をもとに発表されるというようなものではない。
各神社が占うのである。
そんな非科学的な、と思われるかもしれないが、稲の出来ぐあい、金運、結婚、失せもの、その他なんでも占う神社が、自分とこの初詣客の予想くらいできなくてどうする。
毎年12月20日に、全国の主な神社で「来年度初詣客予想神事」が厳かに執り行われる。
宮司、権宮司以下の神職ならびに所管警察の署長ほか警察幹部も同席する。
宮司が列席者にお払いをしたあと、「かけまくもかしこきおおかみのみまえに」と祝詞をあげておみくじを引く。
おみくじに「260万」とか、数字が書いてあるのだ。
このおみくじを神官から署長が恭しく受け取り、その数字に基づいて警備計画を立てる。
長年行われてきた行事であるが、最近若手神職者を中心に改革を求める声が上がっている。
従来の非科学的占いを改め、不作為抽出法によるアンケート調査により、初詣客を把握すべきだと言う意見である。
報道されることはなかったが、今年某有名神社では、改革派の若手神職者たちが、占いを行っている拝殿に押しかけ、宮司以下の抵抗勢力に詰め寄る場面も見られた。
「いつまでもこんなことをしていては、新しい時代についていけません!我々は『ニュージンジャ』運動を通じて、生き残りを図るべきです!こんな非科学的な予想はよそう!」
「えーかげんにしなさい!」
「ほんとにネッ!」