若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

絵本を読む熊谷先生

クリスマスプレゼントに絵本をどうぞ、というような広告が目立つ。

何年か前、「クリスマス絵本」を買ったら、裏表紙に「印刷:コロンビア。製本:エクアドル」とあったので驚いたことがある。
日本の小さな出版社のクリスマス絵本が地球をまたにかけていたのだ。

子供が小さいときはよく絵本を読んでやった。
読まされた、というべきか。
寝る前に、長女と次女がそれぞれ自分の好きな絵本を選ぶ。
全部読み終わるまで寝ない。

長女が幼稚園のとき、次女が風邪をひいて、一日本を読んでやっていたことがる。
幼稚園から帰った長女が、次女の枕元に積み上げられた膨大な絵本を見て、ボーゼン自失、うらやましい!損した!という表情で言った。
「これ、全部読んでやったんか・・・」

絵本というと、中学の熊谷先生を思い出す。
かなり年配の国語の先生で、ちょび髭を生やしておられたので、あだ名は「ひげ」であった。

いかめしい顔で、なまりのある話し方で、面白いとか生徒に人気があるということはなかったと思う。

あるとき、幼稚園の子供たちに絵本を読んで聞かせている、と話された。
中学一年の私は、幼稚園児にも絵本にも関心がなかったので、ふーん、と思っただけだ。
「ほら!小鳥さんが飛んできましたよ!と言うと、子供たちがさっと私の手のほうを見るんですよ」

ちょび髭の、いかめしい顔の先生が、幼稚園児相手に、「小鳥さんが」などと言っている姿を想像することはできなかった。

先生から呪文みたいなのを習った。
何かを覚えるためのものだ。

「トンカツ食ったらうまかろう。うまい。うまいけれども金がない」

なんじゃこれは?
何を覚えるためのものかわかる人いますか。

私たちの学校の校庭は、非常に狭く、朝礼で全校生徒が並ぶのがやっとだったが、どういうわけか、園芸部というのがあって、校庭の隅に小さな畑があった。
先生は園芸部の顧問だった。

ある日私が園芸部の畑を通りかかると、先生が地面に埋めた肥料のつぼのふたを持ち上げるところだった。
ふたを開けた先生は、ちょび髭の顔をしかめて
「くさい!くさい!」と叫んだ。

私の脳に聞きたい。
どうしてこんなしょうもないことを思い出すのだ。
ひょっとすると、私は熊谷先生が好きだったのかも知れんな。