若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

邦楽百選

NHKで演歌を放映していた。

何気なく聞いていて、画面の歌詞を見て驚く。

「あなた好みに結い上げた 髪を解かれて燃え上がる」

きわどいではないか。

このきわどい歌詞を、歌唱力抜群の美人歌手が精一杯悩ましげな表情で歌って全然きわどい感じがしないのが不思議だ。

教育テレビの「邦楽百選」とか「芸能花舞台」をよく見る。
若いころ関心のなかったこういう伝統芸能も、年のせいでその良さがしみじみとわかるようになったわけではない。
国民の義務として見ている。

演歌も二百年位すれば、「邦楽百選」で取り上げられる。

「さて、人間国宝シリーズ、先週は、清元萬寿太夫さんをお招きしましたが、今日は演歌の名人十三世五木ひろしさんです。五木さんは現在88歳、人間国宝として後進の指導に当たるかたわら、なお第一線でご活躍です。五木さん、今日のお召し物がまたすばらしいですね」

「は、これは、ラメ入りのスーツと申しまして、演歌の伝統的衣装で御座います」
「最近は、紋付羽織はかまで座布団に座って歌われることが多いですが、本日は古い演歌の形を再現して特別に立って歌っていただきます。さて、演目の『横浜たそがれ』でございますが、横浜と申しますと、温暖化によって海底に沈みましたあの横浜で御座いますか」

「さようで御座います。残念なことを致しましたねえ。たいそう栄えた都会だったそうですが。名人とうたわれました初代五木ひろしの持ち歌で、初代がこれを歌いますと、若い女性などがキャーキャー騒いだと言うような話も伝わっております」

「ほー、演歌を聞いてキャーキャー騒ぐ?今では考えられませんねえ」
「どうか皆様も、伝統芸能鑑賞という風に堅苦しくお考えにならず、気楽に演歌を楽しんでいただければと思います」

「歌い出しの『よっこはま〜』の腰の使い方が難しいと伺っておりますが」
「私どもの世界では、『横浜十年』と申しまして、この腰が使えれば一人前というとになっております。何十年やりましても、まだまだ満足のいくような腰使いをお見せすることができず、日々これ修行というところで御座います」

「それではご用意ください。エー、そのステッキは昔から使ったものでしょうか?」
「はい、初代がステッキをついて歌うと、ファンの皆様が、すてっきー!と叫んだそうで御座います」
「歌は人間国宝でも、しゃれは国賊ですね」