写経は誰でもどこでもできる。
「インターネット写経」というふざけたことを考える人もいるだろうと思ったら、案の定いました。
画面のお手本を見ながら打ち込むのである。
お手本はプリンターで打ち出すこともできる。
薄墨色で出てくるそうだ。
手軽な仏道修行で結構だと思うのは素人の浅はかさだ。
五来重『日本人の仏教史』によれば、正式な写経は大変だ。
お経を写すのが目的ではないのだ。
まず、写経をする前に精進潔斎をしなければならない。
精進潔斎とはどういうことか知らないが、まあ、一週間か二週間、酒を飲まない肉や魚を食べない、というようなことだろうか。
それくらいはできます、と威張るのは素人の浅はかさで、甘いものを二週間断つというのはどうか。
さて、写経に使う水であるが、水道水でいいと思うのは素人の浅はかさである。
聖なる水を使う。
聖なる水はどこにある。
山奥だ。
と思います。
そこまで汲みに行くのも修行のうちなのである。
山奥の水といっても、ペットボトルのミネラルウォーターではダメですよ。
次に筆であるが、蓬を使うそうだ。
草で字を書く。
むつかしそうだ。
さて、墨とすずりはタダの石だそうです。
石。
すってもすっても墨にはなりませんね。
この、すってもすっても墨にはならなかったところの山奥から汗水たらして汲んで来た聖なる水を草の葉っぱにつけて経文を書き写すのであるから、水が乾けば経文は残らない。
これが本来の写経なのである!
ただ机に向かって心静かに書き写すだけでは小学生のお習字とかわらない!と五来さんは手厳しい。
私は写経の趣味がないので五来さんに賛成。