若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

日舞指導2

宝塚歌舞伎レビュー総踊り練習中のスタジオに戻った私が見たものは「自由の女神」であった。

Uさんが、Iさんの動きを目で追いながら、直立して右手を突き上げている姿が、ニューヨーク港で旧大陸において迫害された人々を迎えるちょっと太目の自由の女神に見えたのであるが、年齢不詳とは言え私と同じような年配のUさんが、右手にたいまつではなく扇子を掲げてピコピコ動かしている様は、難民を迎えるニューヨーク港の自由の女神というよりも送還船を待つ舞鶴港岸壁の母、と言いたいが、母は来ました今日もまたとよろめく足を踏みしめるまでもなく足は大地に根を張ったごとく、立会いに「けたぐり」の奇襲を受けても揺るがぬ不動磐石の構えのUさんを見ると、総踊りのメンバーに加わるのはかなり苦しいと思えた。

さてもう一人、ラジオ体操あるいは手旗信号的動きを続けるIさんの後で、振り付けをおぼえるのに余念のなかったリンダさん、何度か繰り返すうち格好がついてきたな、これは日本舞踊になっている、感心感心と彼女の顔を見て驚いた。
目がアヤシイ光を放っている!
リンダさんはあっちへ飛んでしまったようだ。

カタギ、素人、良家の奥様という感じではない。
上げた扇子に流す視線、肩を揺らし腰をくねらせる有様、完全にお座敷芸者の世界に入ってしまっている。
立派な夫を持つ身でありながらなんですかその目つき手つき腰つきは。

女性の恐ろしさを見せつけるリンダさんとは対照的に、黙々とラジオ体操を続けるIさん、これが同じ女性とは思えないのであったが、私も日本舞踊の素養がないので、Iさんにむかって「日本舞踊の基本がわかっていない!」と厳しく叱責はするものの的確な指導ができず困っているところへうっちゃん登場。

さすがプロのダンサーとして場数を踏んでいるだけに、扇を持つ手はこう、こう動かして手首を返してとてきぱきと指示を出すと、それなりにかっこうはついた。
うっちゃんもただ口から先に生まれたような酒飲みというだけではなかったと感心した。
ほめすぎかもしれないがそう思った。

うっちゃんの指導によって、Iさんは、ラジオ体操、手旗信号のレベルを脱して、カモメの水兵さんくらいのレベルには達することができた。
本番ではカモメの水兵さんを脱して白鳥の舞を期待するとともに、バックダンサーにはおとなしくしていろと言いたい。