今朝、トリノオリンピックの女神が私に微笑んでくれたのか、出勤前、荒川静香さんの演技を見ることができた。
荒川さんは完璧であった。
ロシアのツルツルスカヤだったかスルツカヤだったかの演技も見た。
ジャンプで失敗して転んだ。
その瞬間、思わず「やった!」と叫んでしまった。
声に出したものは取り返しがつかない。
ここに告白懺悔し、今後二度とこのような不謹慎な発言をしないよう修業を重ねる所存ですので、旧に倍しましてのご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
いつものバスはがらがらであった。
駅のテレビは黒山の人だかりであった。
なんと、ベンチには一人も座っていなかった。
私は、一人さびしくベンチに座り、自分がフィギュアスケートの選手になったところを想像してみた。
意外にも、自分が颯爽とすべる姿を簡単に想像することができた。
家内はどうだろう。
これも意外に簡単に想像できた。
ピールマンスピンはちょっときつそうだったが。
家内がすべる姿は、雰囲気としては荒川静香よりスルツカヤに近いなと思った。
私と家内のペアはどうか。
家内をリフトして滑らかにすべるところが想像できた。
フィギュアスケートは思ったより簡単だ。
面白くなって、知ってる人を次々と滑らせて見た。
せんべー君が似合ってるのが不思議だった。
リンダさんはオリンピック選手なみだ。
Y森さんはどうか。
おお!
黒いぴったりしたコスチュームに身を包み、にこやかに金歯をきらめかせながら四回転ジャンプを鮮やかに決める姿をはっきり思い描くことができた。
自分の想像力の暴走が恐ろしくなって急遽打ち切った。
なんでもありなのか。
確認のため、私が重量挙げで300キロのバーベルを持ち上げるところを想像しようとしたが、できなかった。
まわしを締めて無敵の横綱朝青龍を投げ飛ばすところも想像できなかった。
やわらちゃんに投げ飛ばされるところは想像できた。
安心した。
私の想像力は分をわきまえている。
銀盤のプリンスが分相応なのだ。
一人ベンチに座っている私を、皆じろじろ見ながら通っていく。
ニヤニヤ笑っていたからかな。