商工会議所の月報に、「服飾コーディネーター」という肩書きの女性が書いている。
ネクタイに赤い色が入っていると、見る人に「決意」を示すことができる。
紺の背広は、なんだったか忘れた。白いワイシャツもなんだったか忘れた。
ビジネスの場で、もっと服装に気を使うべきだと、服装をビジネスにしている人が言うのは説得力がないように思える。
おなじみNHKの「まちかど情報室」では、時々とんでもなく楽しいビジネスを紹介する。
「ファッションチェック業」あるいは「励まし業」というのだろうか。
ビジネスマンの身だしなみを見てくれる。
客である青年営業マンに、女性が三人でチェックシートに従って検査する。
背筋を伸ばしてください、とか言う。
「失礼します」と言って、青年にぐっと近寄って、クンクンにおいをかぐ。
「近寄るとタバコのにおいがします」と言って、シューシューと消臭スプレーをかける。
最後は、ドリンク剤を渡す。ドリンク剤を飲んでいる間、女性たちは、「○○さんの今日の商談がうまくいきますように!」と叫ぶ。
そして若者を取り囲んで、ウデを突き上げて、「○○さん!ファイトー!ファイトー!ファイトー!」と三唱してくれる。
若者は、「元気が出ます」と言ってうれしそうだった。
見ていてもうれしかったのは、料金が三百円だったことだ。
励まされるとうれしいだろうか。
昔、ある工場に行った。家族でやっている会社で、生産部長である息子がフォークリフトを運転していた。
敷地内にある自宅の二階から、彼の幼い子供達がお父さんの働く姿を見て、いっせいに声を合わせて
「パパー!がんばれー!パパー!がんばれー!パパー!がんばれー!」とエンエンと叫んだ。
励みになるか重荷になるかむつかしいところだ。
しかし、パパを励ます無邪気な子供達だ。
おしゃまな子もいる。
ある会社の若い社長が、幼稚園に行っている娘が、親の話を聞きかじって仕事のことを色々言うので困るとこぼしていた。
先日も大きなクレームを受けて、夜遅く家に帰った。
奥さんが、お帰り、お疲れ様、と出迎えてくれた。
思わず、「はあ〜」とため息をついたとたん、横にいた娘が、「またクレームか?!」と、トゲのある言い方をしたのでこけそうになったそうだ。
こうなると、励まされるほうがましか。