若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

頭で作るな

NHKテレビの「ようこそ先輩」は楽しい番組である。

学問、芸術、スポーツなどいろんな分野で活躍する人が、自分が学んだ小学校のクラスで授業をする。面白い企画だが、視聴者を面白がらせるには難しい企画だ。小学生を相手に、二回の授業で面白い結果が出るわけはない。

スポーツ選手は、小学生にスポーツをさせるし、演劇関係の人は芝居をさせ、美術関係の人は絵を描かせる。授業をする「先輩」も、受ける「後輩」も、それを見る「視聴者」も、「う〜ん・・・」という感じである。
「教育」というのが、関係者全員「う〜ん・・・」というものなのだろう。

昨日は、金子兜太さん。前衛俳人である。わけのわからん俳句を作る人だ。
大正8年生まれと聞いて、お!Hさんといっしょだ、と母と同じ施設にいた人を思い出す。

石にも川にも命がある、その命を感じ取ってほしい。抱きしめてぬくもりを感じ取って俳句にする。頭で作ってはいけない。
頭を使うことを覚えて張り切っている小学生にはむつかしい指示だ。

金子さんが、「命」「命」と繰り返すのには理由があった。
トラック島で米軍の凄まじい砲撃の中を逃げ惑い、餓死者続出という極限状況を生き延びたのだ。

すべてのものに命がある。その命のぬくもりを感じ取ってほしい。
自分の小さな頭でわかったつもりになってはいけない。

子供たちが作った俳句を見ては、これは頭で作ってる、ときちんと批判していた。

子供たちの作品を、無署名で張り出して批評しあう。

「六年間大事に使ったランドセル」
「お守りは父からもらった宝物」

金子さんの俳句も無署名で混ぜてある。

「美野山が笑っているよ正月だ」

「美野山」というのは地元の山だろう。
金子さんがとぼけて、「これはどうかな」と聞く。
女の子が、「美野山が笑ったらどうしてお正月なのかわからない」
「うん、そうかそうか」と金子さんは上機嫌である。

さっき的確な批評をした男の子が立ち上がった。
「これは、自然に作っているみたいだけど、頭で作っていると思います」

「・・・う〜ん・・・。そうだな。・・・これは私のです。頭で作ってるな。・・・時間が足りなかったから頭で作っちゃったんだな。こういうのはダメですね。自分で言ったことが守れてないんだな」

金子さんにも、小学生にも、私にもいい授業であった。