毎年この時期、朝の駅は中学生であふれる。
大阪の私立高校の入学試験だ。
今朝も、ホームは大勢の中学生でにぎやかだった。
女の子達が声をかけあっている。
「がんばろな!」
「がんばりや!」
楽しそうに見える。
楽しいはずはないのに、楽しそうに見える。
車内で6人組の女の子がおしゃべり。
制服がまちまちなので、同じ中学ではなさそうだ。
同じ小学校か。
同じ塾か。
「なこう」とか「ぐんこう」とか言っている。
「奈良高校」「郡山高校」だ。
どっちかの制服がダサい、いやダサくない。
「ダサいよ。・・・まあ、ウチはそんなこと言えるレベルじゃないけど」
「なこうに行けるのに、ぐんこう受ける子がいるから困るわ」
「でも内申がな」
内申点について、115点とか125点とかいう数字が問題になっていた。
「先生が、『キミの内申ではなー。入れるかなー』って。お母さんに言うたら、軽く、『入り!』やて」
「朝なに食べた?」
「カツカレー!」
「もちろんカツカレー!」
「私も!」
「私、朝はご飯食べられへんねん」
「私も。でも無理して食べた。カツカレーやもん」
「バナナ持ってきた?」
「持ってきた」
「私も」
「えー!いつ食べるの?」
「駅から歩きながら食べる」
「えー!立ち食い禁止やのに」
背の高い子が、右手を出して、手のひらでピストルのような形を作った。
「これが、電流やろ」
「えー!磁界やで」
「電流とちがうん?」
「磁界!」
こんなことを言いながらけらけら笑っている。
一人は笑いっぱなしだ。
「あ〜ん、おなか痛いよ〜!試験の最中に思い出し笑いしたらどうしよう?」
「そんな余裕ないって」
「そっか。余裕ないか。あははは・・・」
「あははは・・・」
楽しいはずはないと思うのであるが、楽しそうである。
受験生になりたいと思うほど楽しそうである。