若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

母と子の絆

世界陸上で、日本選手が不振である。
走るとか飛ぶとか投げるとか、日本人には向かないのではないか。
しゃがんだり、中腰、正座でやるような競技なら、いいように思う。

駅前でバスを待っていたら、よちよち歩きの男の子を連れたお母さんが通りがかった。ジーンズ姿の若いお母さんで、右手でベビーカーを押して、左手に紐を握っている。

紐の先に男の子がいる。
母と子の絆というか、母と子の紐というか、まあ、どっちでもいい。
安心である。若いお母さんの中には、子供がうろちょろしても、ほったらかしで、見ているこっちがハラハラすることがある。

犬を連れて歩いているのと似ている。
この紐は、犬の紐と同じようなものか。
昔誰かが書いていた。
「ドイツでは、子供と同じように、犬を厳しくしつける。日本では、子供と同じように、犬を甘やかす」

逆だと言っているようだが、ドイツでも日本でも、子供と犬は同じ扱いということだ。

バス乗り場を通り過ぎて、ゆっくり歩いていく。
母親が、よちよち歩きの子のペースにあわせて、ゆっくり歩いているのはいい感じである。
歩道橋の前で、ベビーカーを止めると、ストッパーをかけたようだ。
あんな所にベビーカーを置いてどうするのかと思っていたら、男の子が歩道橋の階段をのぼりだした。

はは〜ん。
毎日の儀式ですな。あるんですね、こういう、欠かすことのできないおごそかな儀式が。おとなの都合でこれをはしょると、とんでもないことになる。

男の子は、両手をさっさと振ったりせず、変な風に上げて、バランスをとりながら、一段ずつのぼった。十段目くらいからは、四つんばいになってのぼった。

お母さんは、紐を持って、やはり一段ずつのぼった。一番上まで行くと、男の子は振り向いて階段を見下ろし、自分が成し遂げた偉業を確認して満足そうであった。私も、うれしくなって、世界陸上における日本選手の不振を忘れた。

満足感をかみしめると、男の子は、おり始めた。降りるのは難しい。
すぐに、ぶらーんと、操り人形状態になった。
母と子の紐の威力だ。

途中から、お母さんが抱いておりようとしたが、もちろん無駄な努力だ。
男の子は、そっくり返って母の手を脱し、操り人形のように階段をおりた。

これを何度か繰り返すんでしょうな。
ご苦労さまですと、お母さんに一礼してバスに乗った。