図書館で借りた。
この本は、「歴史公論ブックス」の一冊で、雄山閣出版社の、「歴史公論」という雑誌の、保存版だ。
保存版というからには、さぞ立派な本だろうと思うのは素人の浅はかさ。
ぜんぜん、立派ではない。
150ページの薄い冊子だ。
薄くても、立派とか美しいとか言える本もあると思うが、これは言えない。
とにかく、紙が悪い。
完全に、茶色くなっている。
まず、「巻頭グラビア」が、わびしい。
ルンビニー、ブッダガヤ、サールナートなど、仏教の聖地の写真だ。
この本は、1981年発行だが、写真は、どうひいき目に見ても昭和20年代のものとしか思えない。
戦前の本でも、もう少しましな「グラビア」だ。
「巻頭グラビア」でこれだから、本文に添えられた写真は、写真とは思えないものがある。
広隆寺弥勒菩薩と、法隆寺百済観音は、写真だと言われれば写真のような気もするが、鉛筆画と言われれば、そうかなと思う。
それでも、まだ弥勒菩薩と百済観音だということがわかるだけましだ。
朝鮮半島の仏教遺跡を紹介した写真がある。
「軍守里廃寺跡」と説明のある写真二枚は、まったくなにがどうなっているのかわからない。
全面ぼんやり灰色の濃淡である。
霧の深い日に「軍守里廃寺跡」で写真をとって、それを三十年前のコピー機でコピーしたものを、二十年前のファックスで送った、という感じである。
「不鮮明な写真」と言えばほめすぎになる。
これが「保存版」というのだから、雄山閣出版はいい度胸だ。
もう少しいい紙を使えなかったのか。
不思議である。