油絵で自画像を描きはじめる。
今現在の私を、今現在の私が見た、ありのままを描いて残そうというのではない。
「人物画講座」に二回通って、筆の使い方とか色の作り方とかを忘れていることに気づいた。
教室で描くだけでは思い出せそうにないので家でも描こうと思いたったのである。
何を描こうか。
S君の「いろえんぴつ画講座」で洋梨を描いた。
おもしろい形である。
おまけに、S君の話では果物は形を正確に描けなくても、見て「ヘンだ」という感じがしないそうだ。
なるほど、椅子は、ちょっとデッサンが狂うとすわれない感じだが、果物は少々狂っても食べられるし、売り物にもなる。
洋梨を描こう!と張り切って買いに行ったら、なかった。
洋梨の季節は終わったんでしょうか。
洋梨のかわりに何を描こう?
少々狂ってもヘンに見えず、手近にあるもの。
自画像でいこう。
一からは面倒なので、ずぼらをしてS君の講座で描いた、鉛筆の自画像を見て描く。
一人で描くのは気楽でよろしい。
「人物画講座」の生徒の中には、大変うまい人が居る。
十年、二十年通っていればそれなりにうまくなるものだろうか。
長くやればいいというものでないことは、私のギターでよくわかる。
何人かのデッサンを見て驚いた。
うまい!
もうひとつ驚いたのは、よく描けているな〜、と感心するようなデッサンを、先生がどんどん直す。
私が見ている分には、完全に「合格!」という感じだが、先生の目で見るとおかしいようだ。
直された人に、「あのままでよかったんじゃないですか」と聞いてみたら、
「イヤイヤ、先生のおっしゃるとおりです」とのことであった。
先週の講座が済んで、帰り支度をしている時、年齢不詳のベテラン婦人たちがおしゃべり。
「今度のモデルさん、やせっぽちやねえ」
「今はどこのモデルさんもそうよ。昔はもうちょっとね」
「最近の若い人はみんなやせてはるから」
「いっぺん豊満な女性描いてみたいワ」
「ほんとやねえ。ルノワールみたいな」
「そうそう」
モデルさんについては、私は、コメントを差し控えさせていただきますが、この方たちは、一応、全員ルノワール級かな。