若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

あの夫婦は今2

石垣島新婚夫婦の次は、名古屋熟年夫婦だ。

Bさんは、ウチの得意先であったA社の名古屋支店営業課長だった。
二十年ほど前の話だが、当時50歳くらい、今流行最先端のメタボ体格、ざっくばらんで太っ腹、いかにも一部上場企業のやり手の営業課長という感じの人だった。

Bさんの電話は、いつもきまってた。
「×日、支店に9時に入ってくれる?」

あるとき、部長が同席して、契約の話を持ち出した。
部長が部屋を出ると、それまでいっしょに説明していたBさんがいった。
「ほっときゃええんよ。おたくのプラスにならんよ」

だいたい仕事は午前中ですむ。
Bさんと昼食でもということになるのだが、かなり辺鄙なところなので、行きつけの店に車で連れて行ってもらう。

勘定はこっち持ちだが、豪華昼食でもしれている。
あるとき、いつもの店が休みで、もう一軒行った店も休みだった。

「しょうがないなあ。あそこにするか」

だだっ広い敷地に、大きな工場のような建物。
中央卸売市場だった。
そこの食堂がうまいという。

新鮮な高級食材を使った、通好みの店なのか。
ちがった。
いかにも、「卸売市場従業員食堂」という感じの店で、メニューもそんなものだった。

お勘定。
二人で580円!

Bさんは、ニヤニヤ笑いながら、「ごちそうさまです!」と頭を下げた。

さて、Bさんと昼食を食べている時だった。
「こないだ、交通事故でえらい目にあってねー」

奥さんの運転で出かけて、大型トラックと衝突した。
完全に奥さんが悪かった。
双方怪我はなかったが、どちらの車体にもかなり傷がついた。
Bさんは、とにかく自分が謝らないとと思って車を降りた。

石垣島新婚夫とえらいちがいですね。
二人で年月を重ね、苦労を共にすることによって、本当の夫婦になるのだ。

激高してまくし立てる運転手に、Bさんは平謝りに謝った。
ひたすら謝り続けて、事故の処理についても納得してもらったところで、奥さんにも一言謝らせようと思って振り向いたBさんは驚いた。

奥さんの姿がない!
車の中にも、車の陰にも、車の下にもいない。

なんと、奥さんは、Bさんが平謝りに謝っている最中に、タクシーを止めて家に帰っていたのだ。

石垣島新婚夫婦と名古屋熟年夫婦。
いろんな夫婦がありますね。