高校時代の美術部の後輩T君から、大皿ができました、と連絡があった。
大皿?
なんじゃそれは?
先月、T君といつもの店で飲んだ。
店に大きな皿が飾ってあって、奥さんが「いい絵柄でしょう」と自慢した。
なるほどいい絵だとほめたら、T君が、これくらい描けますよと軽く言った。
彼は退職後、市の陶芸教室に通っている。
「陶芸もいいけど、作品がたまって」と顔を曇らせていた。
しばらくして、ぐい飲みをプレゼントされた。
過去にも、陶芸をはじめた人から、ぐい飲みをプレゼントされたことがある。
ちょっと困ったぐい飲みであった。
底が平らではなく、ぎざぎざだった。
安定しない上、テーブルに傷がつく。
もっと困ったのは、酒を注ぐと倒れてしまうことだった。
また、ある人から徳利をもらったことがある。
色といい形といい、実に奇怪なものであった。
陶器というより、プラスチックを高音で処理したもののように思えた。
T君のぐい飲みは、底が平らでふつうに使える。
さて、大皿だ。
T君が、この程度なら描けますよ、と軽く言った。
それを聞いた私が、ウデのほどを見たい、と言ったそうだ。
で、欲しいと言うなら作ってさしあげましょう、ということになったのだ。
ちょっと飛躍があるように思うのであるが、T君からすれば、自然な展開のようだ。
飲み屋で、さっそく拝見。
ぶどうや果物が描いてあって、まあ立派なものであった。
ヘンテコな皿だったどうしようかと心配していたが、これならいいんじゃないでしょうか。
紙袋に入れて、椅子の背にもたせ掛けたら、そんな置き方をしてはいけないと言う。
前に誰かに皿をプレゼントしたとき、そういう置き方をして、滑り落ちて割れてしまったことがあるそうだ。
誰かに小鉢をプレゼントしたときは、飲み屋の棚に置いたら、これも落ちて割れてしまった。
どうやらT君は、激しいプレゼント作戦実施中のようだ。
きのうはいろんな人に会った。
バス停に若い女性が立っていて、私を見てお辞儀した。
このあたりで私にお辞儀をする若い女性と言うと、息子の小学生のころの友達のゆかりちゃんかなと思ったら、ゆかりちゃんだった。
地下鉄を降りて歩いていたら、手を振る男がいて、高校の同級生だった。
二件目のバーでは、入ってきた男が、これも高校の同級生だった。
なんだか得をしたような一日だった。