若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

吉村克己『満身これ学究』

副題は、「古筆学の創始者小松茂美の闘い」

本の帯には、「『不可能』に挑戦し、やり遂げた男がいる。一介の鉄道員から学問を志し、学閥差別や嫌がらせにも屈せず、古典研究に革新をもたらした『古筆学』を独力で打ち立てた異能の学者、小松茂美。その壮絶な闘いの生涯を描く」

ほんとに、「壮絶」である。
「平家納経」の研究者として、小松茂美さんの名前だけは知っていた。
東大卒とかの偉い学者なのだろうと思っていたら、中学を卒業して国鉄に入り、若いとき一目見た「平家納経」に魅入られて、ついに超一流の学者になってしまったという、とんでもない人なのであった。

「やる気があればなんでもできる。できないのはやる気がないからだ」

この本を読んだ感想として、まず、こういう元気が出るような出ないような、単純でありきたりのことが心に浮かんだ。

まあ、なんちゅうか、すごいです。
「満身これ学究」というヘンな言葉は、作家の井上靖さんが、小松さんを評して言った言葉である。
では、学問一筋かというと、芸者を揚げてどんちゃん騒ぎもする。
それも、学問のためということでしょうな。

小松さんのお父さんは幼時に両親を亡くした苦労人で、努力に努力を重ねて、国鉄の駅長にまでなった人だ。
息子には、安全確実な人生を送ってもらいたいと願って、中学を出すと国鉄に就職させた。
後に、学問を志した息子を勘当している。

大変な教育パパで、息子の小学校の授業参観にも熱心だった。
中学の入試にパスした息子の入学式にもついてきた。

入学式の日、校内放送で小松さんの名が呼ばれた。
何事かと、親子で教員室に駆けつけた。

すると、「君は、入試の成績が一番だったから、宣誓文を読んでほしい」といわれた。
思いがけないことで、小松さんも驚いたが、お父さんはもっと驚いた。

驚いたお父さんは、何を勘違いしたのか、「ハイッ!」と叫ぶと、先生の手から宣誓文を奪い取り、その場で読み上げ始めたそうだ。

この本で一番心に残ったのがここだということで、私のレベルがわかると思う。