『おくりびと』という映画が、アカデミー賞を取って評判になっている。
「納棺」に携わる人である「納棺夫」が主人公らしい。
珍しい職業をテーマにした『マルサの女』系の作品だろうと思ったが、「感動系」のようだ。
二十数年前、伯父がなくなったときは、父や私が、伯父の身体を棺に入れた。
葬儀社の人が入れるのが多いだろうか。
地域にもよるだろう。
「納棺夫」という専門職があるのだろうか。
なにごとも、「分業」、「外注」の時代ですね。
あと、「付加価値」の時代か。
去年、母が亡くなったとき、葬儀社との打ち合わせで、「エンバーミングをしませんか」といわれた。
何かと思ったら、ふつうの「化粧」より高級で、かなり若々しく見せる技術のようだ。
死んだ母に若返ってもらわなくていい。
私にお願いしたいと言ったら断られた。
エンバーミングの技術もまだまだだ。
骨壷もピンからキリまであるので迷った。
棺桶も、お客様のニーズに合わせて、各種取り揃えてあった。
父の時にはこれほどなかったと思う。
昔、日本で死んだアメリカ人の遺体を、白木の棺桶に入れて安置していたら、やってきた遺族が、こんな粗末な木の箱に入れて!と大変怒ったという話を読んだことがある。
アメリカでは、そのころから豪華棺桶が好まれていたのだ。
棺桶の世界も、アメリカ化が進んでいる。
先日、母の葬儀を頼んだ葬儀社からダイレクトメールが来た。
「遺族友の会」みたいなのがあるのだ。
後に残されたものが励まし支えあう。
遺族が慰められ、会社が利益をあげる。
悪いことではなさそうだ。
親類、ご近所、お寺さんなどが受け持っていたことを、会社が代行する、ということになるのだろうか。
小学生のころ、隣のお姉さんが亡くなった。
霊柩車は、「御所車」のような感じで、人間がひいた。
私たちは、後からついて歩いて焼き場に行った。
「人力霊柩車」を見たのは、それが最初で最後だ。
霊柩車は、それからすぐに、ケンランゴーカな自動車になった。
葬儀の世界は、昔ながらの一面と同時に、時代の先端を行ってる面もあるのだと思う。