NHK教育テレビが50周年ということで、古い番組を再放送している。
きのうは、25年前の、杉村春子と森繁久弥の「ビッグ対談」。
お二人は文句なしにビッグです。
案の定面白くなかった。
ビッグな二人に自由に語らせたら、ビッグな対談になると思うのが浅はかなのではなかろうか。
ビッグな人のことをよく知ってるビッグでない人がお話をうかがうというのがいいと思います。
森繁さんに、「ビッグ意識」が強すぎて、「ビッグな話をしよう!」という気合ばかりが空回りしてるようにも思えた。
昔、笑福亭仁鶴がゲストを招いて話を聞くテレビ番組があった。
作家の森敦さんが出たとき、対談の後で、「仁鶴さん、あなたは卓球選手におなりなさい。こう打てばこう返す、またこう打てばこう返す、素晴らしい卓球選手になれます」と言った。
お世辞半分としても、まあ楽しい番組だった。
が、森繁さんが出たときは大変だった。
一人舞台である。
何を言おうとしているのかわけのわからん話を延々とする。
仁鶴に口を挟ませない。
人気絶頂の仁鶴が、扱いかねて冷や汗をかいてる感じだった。
実に異様な感じで番組は終った。
しばらくして、藤本義一さんが出たとき、仁鶴がその話を持ち出した。
藤本さんは、アハハと笑って、「やられましたか。森繁さんは、よくやるんですよね」と言った。
どうやら、森繁さんは、売り出し中の若手をぎゃふんと言わせるのが趣味だったようだ。
どんな趣味でも別にいいけど、番組でやるべきではないだろう。
それに、ぎゃふんと言わせたとか、見事に一本とったとか言うより、ただ困らせてただけだ。
この一件だけで、私が「森繁嫌い」になってしまったのは、森繁さんの不徳の致すところである。
杉村春子の前では、さすがの森繁もおとなしいものであったが、なんとか「いい話」をしようとあがいているのが、気の毒でもあり見苦しくもあった。
以前、やはり教育テレビで、森繁が「講演」をしたことがある。
そのときも、何を言いたいのかわからず、悪戦苦闘の模様で、あの森繁が、これほどしどろもどろになるのかと、不思議に思ったことがある。
役者は、せりふを言うのは仕事だが、勝手にしゃべりなさいと言われると、結構困るのではなかろうか。
『ビッグ対談』、森繁嫌いの私としては、楽しく見ていられたのであった。