若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

モスクワの靴屋さん

朝日新聞読者の投稿欄。

還暦を機に、モスクワに一ヶ月の語学留学をした男性の投稿。

モスクワで靴底がはがれたので、修理に持っていった。
はじめに行った靴屋では、400ルーブルといわれて、別の店に行ったら550ルーブルといわれた。

はじめの店に戻ったら、500ルーブルだというので、「猛然と抗議して」400ルーブルで引き受けさせた。
猛然と抗議できるだけの語学力はあるようです。

靴屋は、アルメニアの出身だといった。
筆者は、「異国で、小さな靴屋を営むこの男性」の仕事ぶりを見て、実にていねいであるのに感心した。

感心した筆者は、50ルーブル上乗せして、450ルーブル渡した。
すると、靴屋は厳しい顔をして「なぜだ」といった。
そして、すぐにこりとして、200ルーブルでいいといって、それ以上受け取らなかった。

靴屋の心に何が起きたのだろう、この不思議な靴屋との出会いが忘れられない、と締めくくってある。

ややこしい話である。

モスクワには、すぐ値段を比較できるほど、靴屋がたくさんあるのだろうか。
戻ってきたこの人に、なぜ靴屋はさっきより高い値段をいったのだろうか。
「ほかの店と比較するなんて」と、気分を害したのだろうか。

仕事ぶりを見て、50ルーブルはずむほど、この人は靴の修理に詳しいのだろうか。

靴屋は、仕事ぶりを評価してくれたらしい客に、50%オフでこたえるほど感激したのだろうか。

筆者は、異国で小さな靴屋を営む男に半額にまけてもらって、靴屋の心に何が起きたのだろうかと不思議に思っただけで、そのまま帰ってきたのであろうか。

猛然と抗議する語学力はあるけど、心の中で何が起きたかを聞く語学力はなかったのだろうか。

これだけでも、何だかすっきりしない話であるが、この投稿には、出発前の話が書いてある。

出発前から、革靴の底が、はがれそうだったというのだ。
奥さんが、もしはがれたら、向こうで修理したらいいというので、そのまま出発した。

で、モスクワで一週間ほどしたとき、「靴底が、案の定ガバッとはがれた」のだそうです。

「一週間」で「案の定」「ガバッ」というのがスゴイと思った。

靴屋さんの心に何が起きたかも不思議か知らんが、一週間で案の定ガバッとはがれる靴底でモスクワに出発する人も不思議であると思う。

アルメニア靴屋さんも、日本の語学留学生も、不思議です。