少し前までは、印象派の画集に一枚出てるくらいの人でした。
感じのいい絵だとは思ってましたが、「印象派の主要メンバーのお友達」的扱いだったと思います。
画家というより、マネが描いた「スミレの花束のベルト・モリゾ」のモデルとしてよく知られていたんじゃないでしょうか。
最近では画集も出たり展覧会も開かれたりで評価が高くなってまするようです。
私も画集を買って彼女の作品を見るにつれ、好感度アップ中です。
私とベルト・モリゾの距離が一気に近づいたのは三年前です。
油絵を再開して家族の肖像を描いてました。
私が満足できるような絵が描けないのは当然として、それ以上の大々的当然のこととしてモデルが満足できるような絵も描けなかった。
何度かモデルになったもののロクな絵ができないのに業を煮やした家内が、「マネのベルト・モリゾみたいな絵は描けないの?」と言ったんです。
家内は、何年か前に美術館でマネの「スミレの花束のベルト・モリゾ」を見て大変感激してたんです。
ああいう風に描けないのか。
挑発的とも嘲弄的ともいえる発言である。
挑発嘲弄されておとなしく引き下がっている私ではございません。
「ベルト・モリゾみたいな女性が黒ずくめのドレスでスミレのブーケを持って座ってくれたら描けるよ!」
描けるわけないですよ。
ないけども、まあ行きがかり上ケツをまくったわけです。
私はふだんケツをまくるというような下品なまねはいたしません。
家内の言い方にカチンときたのでケツをまくらせていただきました。
ケツをまくられたからといっておとなしく引き下がっているような家内ではございません。
「じゃあ模写したら?」と無慈悲にもとどめをさしてきた。
とどめを刺されたからといっておとなしく引き下がる私ではございません。
というようなわけでしたくもない模写をすることになってしまった。
模写初体験。
で、楽しかった。
もちろん、マネの鮮やかな筆使いなどは再現できてませんよ。
ウチにかけとく肉筆油絵コピーとしては十分だと思いました。
家内も満足だったようで、「模写だけにしなさい」と大きなお世話的というか屈辱的というか、まあそんな発言もございました。
さて、このたび坂上桂子著『ベルト・モリゾ:ある女性画家の生きた近代』という本を買ったら、ベルト・モリゾのかっこいい写真があったんです。
マネは何枚もベルト・モリゾをモデルに描いてるけど、こんなかっこいいポーズはない。
当時としてはこういうポーズはかっこつけすぎで時代遅れだったのかな。
ベルト・モリゾさんは、一枚くらいこういうかっこいいポーズで描いてほしかったんじゃないでしょうか。
そんな彼女の思いを胸に(勝手に想像)、マネのかわりに私ではレベルがちがいすぎますが、なんとか喜んでいただけるような絵に仕上げたいと思います。