ヤマハ発表会のビデオを見直して、私自身、20年近くよくもまあこけ続けてきたもんだと感心しました。
Y森さんや、ほかの人のこけるとこは笑って見てられますが、自分のは見てられませんな。
いろんな人がいたなあと感慨無量である。
私がエレキギターを習い始めてすぐ、O君という青年が入ってきた。
なんちゅうか、見た感じが「どよ〜〜〜ん」とした若者であった。
だいじょうぶかな、と思わせる風貌であった。
このO君が、「エレキギター命!」とはとても見えませんよ。
うまいというのかへたというのか、よくわからん人でした。
指はすごく早く動くんですが、リズムに合わせる気がまったくない。
一人で勝手に弾いてる。
音量がすごかった。
爆音です。
発表会でも、ボーカルもクソもなく、ただひとり爆音で弾きまくって満足してる。
彼が、「今度バンドを組んでライブハウスに出るんです」と言ったとき、大丈夫かなと心配でしたが、案の定、「途中で何をやってるかわからなくなって、何度も演奏が止まりました」とのことでした。
彼に少し遅れて入ってきたのがS君。
対照的さわやか系好青年。
大手会計事務所所属の有能な青年会計士、というのが表の顔です。
さてその実態は?
このS君がまたO君に輪をかけた爆音派とは、人は見かけによらんもんです。
二人といっしょのレッスンは苦痛でしたね。
先生が音量を下げろといっても聞かない。
S君は、ある程度弾けるようになっても、一度も発表会に出ようとしませんでした。
あと、年齢不詳の女性がいました。
発表会で、スーツ姿で無表情にハードロックを演奏する。
不思議な人であった。
ヘンな人ばかりじゃないですよ。
天理市の大きな病院の青年医師もいました。
この人はうまかったし極めて普通の人でした。
同じ病院の先生がたくさん教室に習いに来てました。
全員サックス科です。
はじめ一人の先生が習いに来て、「サックス科の先生が若くて美人だ」ということで、次々と習いに来るようになったらしい。
実に不純な動機で苦々しいことである。
発表会で、この先生たちの演奏を聞いたことがあります。
印象に残る先生がひとりいた。
ほかの先生たちが無難に済ませた中で、ボロボロの人がいたのだ。
ステージに現れた時から緊張感丸出しで、司会者から「だいぶ緊張されてますね」と言われて、「足が震えるのは初めての経験です」と答えてました。
足の震えは客席から分からなかったけど、サックスを持つ手がブルブル震えてるのはよく見えました。
ピーピー変な音を出して、脂汗を浮かべてました。
さて、それからしばらくして、私の父がその大病院で手術を受けることになった。
手術の担当医の話を聞くことになって、行ってみたら、なんとその先生であった。
先生の方は私を知らなかったけど、私は、震える手でサックスを持ち、ピーピー変な音を出して脂汗を浮かべていた先生の姿を思い出してイヤな感じがした。
手術、大丈夫かな。
大丈夫でした。
サックスを持つ手は震えても、メスを持つ手は震えなかったようです。