久しぶりで、ヤマハの発表会に行きました。
長年エレキギターを習ったS先生から案内があったんです。
会場は、ビルの中のこじんまりしたライブハウスで、入り口がどこかわからなかった。
入り口と思える付近に立っていた若い女性が関係者風だったので、ここから入ったらいいのか聞きました。
すると、彼女はにこりともせず、というより、こわい顔で、「あんただれやねん!」という雰囲気丸出しで、ちょっとうなずいてプイと行ってしまった。
なんと無愛想な女であろうか。
入ると、サックスの演奏中でした。
ヤマハの先生たちがバックバンドで、生徒が歌ったり演奏したりという形です。
演奏を終えた女性が、インタビューを受けます。
「今日の演奏いかがでしたか」
「いや〜、あがってしまって、何度もまちがえてしまいました」
「いやいや、素敵な演奏でした。聞いている皆さんにはわかりませんから、だいじょうぶですよ」
過去、ヤマハの発表会で何度も繰り返された問答です。
「では、次の方どうぞ!」という司会者の声に促されて登場したのは、おお!先ほどの無愛想な女性ではないか。
そうか。
出番直前で緊張してたんですね。
「ああ〜!歌詞を忘れたらどうしよう!」とか思ってるとこに現れた見知らぬおじさんが、しょ〜もないこと聞くので、「うるさい!」という感じになったんですね。
彼女の無愛想を許しました。
彼女の歌が終わって、客席でビデオ撮影中の先生を発見。
「撮影、かわりましょうか」と言ったら、「お願いします」とのことで交代。
5年ほどのブランクを感じさせないスムーズな交代でした。
私は、20年近くエレキギターを習ったんですが、先生は、私のギターに期待することはなく、ビデオ撮影に期待してました。
ヤマハの発表会では、私はギタリストというよりカメラマンであったことをしみじみと思い出した。
終了後、居酒屋で打ち上げ。
私たちのテーブルは、先生を交えて6人。
顔見知りは、美魔女リンダさんと、珍青年どて君。
リンダさんのどこが魔女かというと、堅気の主婦なのに、ステージに上がると、なんちゅうか、何かが飛んじゃうんでしょうね、激しいボディアクションで、アヤシイ目つき手つき腰つき、まあ、魔女ですわ。
どて君のどこが珍かというと、全身是珍という感じなんですが、たとえば、十年ほど前、知恩院で除夜の鐘を突いたとき、空振りしてしまって、創建以来の大珍事として、NHKの「行く年来る年」で取り上げられたほどの珍青年です。
この話をすると、「お寺の鐘を突きそこなったり空振りしたりなんてことがあるんですか」とよく聞かれるんですが、その信じられないようなことをしでかすのが珍青年の珍青年たるゆえんです。
さて、乾杯のあと、リンダさんが串カツ盛り合わせを注文して、じゃんけんでどれを取るか決めようと言ったんですが、何たることか、どて君が勝ってしまった。
私が、「ここで何を取るかで、どて君の気配りのほどがわかるな」と言ったら、リンダさんが、「気配りのどてさんのことだから、しし唐を取ると思う」と言った。
どて君は、「ええ〜!ボク、勝ったのにしし唐ですか」と情けない声を出した。
私は、皿にレモンと唐辛子があるのを見て、「いやいや、気配りのどて君のことだから、レモンに唐辛子をつけて食べると思う」と言ったら、彼は苦悶の表情を浮かべて、レモンに唐辛子をつけて食べました。
「さすがどて君やなあ」とほめたたえつつ、しし唐その他串カツは私たちがいただきました。
次にリンダさんが、テンプラ盛り合わせを頼んで、またじゃんけんで決めようと言ったんですが、何たることかまたもどて君が勝ってしまった。
リンダさんが、「気配りのどてさんのことだから、パセリを選ぶと思う」と言ったら、どて君は、「ええ〜!さっきは勝ったのにレモンと唐辛子で、今度は勝ったのにパセリですか」とさっきにもまして情けない声を出した。
私が、「いや、気配りのどて君のことだから、テンプラが乗ってる紙を選ぶと思う」と言ったら、どて君は苦悶の表情を浮かべて油のよくしみた紙を食べました。
さすがどて君やなあとほめたたえつつ、エビその他テンプラは私たちがいただきました。
ひさしぶりのヤマハの打ち上げ、楽しかったです。