若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

火曜サスペンス劇場「レディ・ディグビー突然死の謎」

17世kの画家、ヴァン・ダイクの画集を読んでます。

天才的肖像画家として、どこへ行っても王侯貴族大金持ちから引っ張りダコという、うらやましい人です。
でも、超売れっ子というのも大変ですね。

とくにイギリスで大人気だったようです。
国王チャールズ1世はじめ貴族たちから注文が殺到して、イギリスにいた7年半の間に400枚以上の肖像画を描いたそうです。
こうなると、描いたというより、描かされたという感じですかね。
肖像画だけじゃなく、祭壇画も描いてるんですから、むちゃくちゃですよ。

助手を何人も使ったうえ、下請けまで使って制作に追われた。

そのイギリスで、ヴァン・ダイクの最大の理解者であり後援者であったのが国王の家臣で外交官としても活躍したサー・ケネルム・ディグビーです。
彼が描かせた絵が3枚紹介してあります。

一枚目は、彼と夫人のヴェネシアさんと二人の息子の肖像。
ヴェネシアさんは堂々たるべっぴんさんです。

二枚目は、一風変わった絵です。
印象はタッチの絵で、ヴェネシアさんがベッドですやすや寝てるとこかと思いましたが、なんと死んでるんです。
彼女は33歳で突然死したんです。
朝侍女が起こしに行ったらベッドの中で死んでいた。

サー・ディグビーはすぐにヴァン・ダイクに連絡を取り、二日後、ベッドに横たわる妻を描かせたのです。
実に安らかな顔と、身につけた真珠のアクセサリー、ベッドに置かれたバラの花が、妻を偲ぶサー・ディグビーの愛情を感じさせます。

三枚目は、妻の死後ほどなく描かせた絵で、ヴェネシアさんの肖像です。
これも変わってます。
ヴェネシアさんの右腕に蛇がからみつき、左手で鳩をさわってたり、目隠しされたキューピッドがいたり、ややこしい。
解説によると、この絵は、ヴェネシアさんが完璧な妻であったことを世に伝えるためのものです。
賢明で、貞淑で、あらゆる誘惑に打ち勝った素晴らしい妻、という意味が込められてるそうです。

なんと美しい夫婦愛であろうかと感激するのは素人の浅はかさですよ。

このヴェネシアさん、結婚前から尻軽な浮気女として悪名高かったそうです。
結婚してからもいろんな噂が絶えなかった。
サー・ディグビーはそういう噂は承知の上だった。

そして、ヴェネシアさんの突然死。
嫉妬に狂ったサー・ディグビーが毒殺したんじゃないかという疑惑が生じ、国王チャールズ1世が解剖を命じたという話も伝わっているそうです。
彼はアマチュア化学者として、薬の調合なんかをしてたんです。

毒殺の疑惑をそらすために、ヴァン・ダイクに命じて安らかな死に顔を描かせたのじゃないか。
嫉妬に狂ったのじゃないと見せるために、完璧な妻を褒め称える絵を描かせたんじゃないか。

古畑任三郎登場、いや、ここはシャーロック・ホームズですか。

↓人気のない肖像画家の新作。