「気まずい沈黙」というのは、誰しも、一度や二度や三度や四度くらいは経験してるんじゃないでしょうか。
たいしたことじゃないですよ。
「気まずい沈黙」のあと、大きく運命が変わった、というようなことはないと思います。
今日は、カルチャーセンター人物画教室。
今日から新学期。
新しいモデルさんです。
新しいモデルさんが、衣装に着替えてニコニコと我々の前に現れたとき、その場を気まずい沈黙が支配したのであった。
モデルさんがあまりにもブスだった、というわけじゃありません。
生徒は、60代70代中心の、人生経験豊かな良識ある大人でございますよ。
そんなことで「気まずい沈黙」はありません。
私たちが黙ってしまったのは、モデルさんが、ロシアの民族衣装を着て、バラライカを持っていたからなんです。
いや、ロシアの民族衣装もバラライカもいいんですよ。
いいんですが、3年前、このクラスで、まったく同じ衣装のバラライカを持ったモデルさんを描いたことがあるんです。
「気まずい沈黙」になるのもムリないですよね。
その気まずい沈黙を破って、今年88歳の先生が、モデルさんに向かってにこやかに、「珍しい衣装で、よろしおますな」と言われたので、一同カックンとなったのであった。
衣装は、先生と幹事役で決めることになってるのですが、なんか手違いがあったんでしょうな。
さて、新学期で、新入生もありました。
私と同年配の男性で、自己紹介の時、「Hと申します。28年前、このクラスで3ヵ月程お世話になりました」とあいさつしました。
このクラスは40年ほどの歴史あるクラスです。
私が、「28年前からいてた人?」と聞いたら、3人の女性が手を挙げました。
もちろん、3人ともおぼえてませんでした。
言うまでもなく、先生もおぼえてませんでした。
おぼえてなくても、おぼえられてなくても、気まずい沈黙はありませんでした。