絵を描いてたら宅配便でCDが届きました。
ヤマハでエレキギターを習ってたS先生からで、ヤマハでの私の相棒で去年亡くなったY森さんの「ソロアルバム」でした。
面倒見のいいS先生が、一周忌記念盤として作られたのでしょう。
Y森さんのボーカル、私のギターという組み合わせは、ヤマハ名物の一つだったと思います。
発表会のたび、二人で激しくコケましたからね。
いつだったかのヤマハの発表会の時のことです。
先生たちは楽屋に詰めて、次に出る生徒たちの準備を手伝ったり励ましたり忙しい。
さて、Y森さんと私のバンドの出番になって、ステージに出て客席を見たら、なんと先生たちが全員客席にまわって私たちを見てニヤニヤ笑ってるじゃありませんか。
それを見たY森さんが言いましたね。
「くそ〜!ワシがコケるとこをみんなで見るつもりやな!」
私たちは、コケることを期待されていて、その期待を裏切らず盛大にコケまくりました。
CDが届いた時、私は絵を描きながら、ショパンの夜想曲をフジコ・へミングの演奏で聞いてました。
Y森さんのCDが届いたとなると、そんなもん聞いてられませんよ。
ショパンとフジコ・ヘミングさんには悪いけど、即チェンジ。
届いたCDは、先生が教室で録音されたもののようで、「ライブ」じゃないので、さすがのY森さんも、コケてません。
「スタジオ録音」なので、歌声はかなり良くなってます。
先生が、持てる技術のすべてを駆使して録音されたようです。
が、先生の持てる技術を総動員しても、Y森さんのテンポのずれはどうしようもないようであった。
一曲目が、ビートルズの「プリーズプリーズミー」だったので驚きました。
Y森さんがなぜビートルズ。
1950年から60年にかけてのアメリカンポップスファンだったんですが。
さて、「プリーズプリーズミー」ですが、Y森さん独特の、「どこから歌いだしたらええんかいなあ・・・ここかなあ・・・いやもうちょっと先かなあ・・・あっ!出遅れた!」的手さぐり感丸出しで、生前の勇姿を思い出してしみじみしてしまった。
5曲入ってましたが、最後の「ビューティフルサンデー」が日本語だったのは意外でした。
Y森さんは、英語にこだわる人だったんです。
先生や私が、日本語で歌うほうが楽ですよと、いくらすすめても、かたくなに英語で歌うことにこだわった。
カタカナで書いた歌詞カードを見ながら必死で英語で歌うY森さんの姿を思い出して手を合わせたのであった。
私は、S先生のことを、介護士みたいな人だと思ってました。
私みたいな要介護ギタリストや、Y森さんみたいな要介護歌手を、全身全霊で世話する。
一言言えば済むんです。
「あなたにギターはムリです」
「あなたは歌に向いてません」
その一言をぐっと飲み込んで、なんとかステージに立たせてやろうとする。
頭が下がりました。
今、亡きY森さんを偲ぶ先作りのCDを手にして、先生は介護士を超え、納棺師の域に達しておられると思い、尊敬の念を新たにした次第です。
↓ショパンの夜想曲を聞きながら描いてたはなちゃん像。
途中からBGMがY森さんになったので、はなちゃん、びっくりしたと思います。
Y森さんの歌声に調子を狂わされることなく完成したいと思います。
はなちゃんが持ってるのは、入園祝いの紅白饅頭です。